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世襲議員の再生産で政界がたどる縮小均衡を示す内閣改造

2023年09月15日 | 政治

 

民間企業なら倒産している別世界

2023年9月15日

 岸田首相が内閣改造と自民党役員人事を行いました。「女性抜擢、刷新感アピール」(朝日新聞1面)、「女性登用、首相が転換。支持率上げ衆院解散」(同3面)、「年内でも衆院解散できるよう狙う」と、朝日新聞までが岸田内閣の広報担当紙の印象です。

 

 世論調査をみると、内閣改造は評価されていません。読売新聞(15日)は「支持する35%、指示しない50%」(読売新聞、15日)で横ばいです。日経新聞は「支持する45%、支持しない51%」で、「支持する」は横ばい、「支持しない」は1㌽の上昇です。

 

 岸田首相が「政権浮揚効果」を狙ったのは明らかでも、朝日の見立ては外れました。「年内解散」はこのままでは、無理でしょう。

 

 「女性抜擢5人」のうち、3人は世襲議員だったことが不評を買った。土屋復興相(71)は父が参議院議長、埼玉県知事、自見地方創生相(47)は郵政改革相の次女、加藤少子化相(44)は加藤自民党幹事長の三女です。世襲でないのは、上川外相(70)、高市経済安全保障相(62)の2人です。

 

 大物議員のお嬢さんが親の七光りで当選できたという印象を有権者は持っているでしょう。女性議員が少ないため、無理してでも「民間企業の役員比率30%」に近づけようとした結果です。

 

 党人事はどうでしょうか。幹事長は麻生氏(82)は祖父が吉田茂首相、選対委員長の小渕優子(49)氏は父親が首相です。小渕氏は「政治とカネ」の問題で経産相を辞任(14年)し、関係者がデータディスクを破壊した。その人物をこともあろうに選挙対策のトップにつけるとは信じがたい。

 

 しかも当初の人事案では小渕氏は自民党幹事長だった(読売)そうです。岸田首相が「政治とカネ」疑惑の世襲議員を幹事長にしたいと考えていたとしたら、政治的感度の鈍さは目に余る。

 

 総理を含む閣僚級は20人で、世襲は8人です。西村経産相は元自治相の娘婿ですから、西村氏を含めると、半数が世襲議員です。

 

 議員が辞めると、後継者に子女を据えることが多い。21年の衆院選では、自民党の場合、当選者の約30%が世襲でした。ケネディ家、ブッシュ家のように、米国では著名な政治一族が存在します。それでも世襲は上下院議員の5%にすぎないようです。

 

 世襲議員が再生産されていけば、30%という世襲比率はどこまでも上昇を続ける。若くして出馬し、労せずして当選回数を重ねれば、閣僚、首相への道が開けてくる。安倍氏、麻生氏は首相だった祖父の政治思想を色濃く受け継いでいる。これでは日本の保守政界が政治の新しい流れを作れない。

 

 こうしたも根深い問題に新聞は触れない。朝日の社説は「女性議員の少ない現状を改める契機としなければならない」と書いても、小渕、自見、加藤、土屋氏のように、「親の後継者に指名されないと、なかなか当選できない」という指摘をなぜしないのでしょうか。

 

 読売も日経の社説も世襲問題に触れていません。政治部記者が政治記事を書いていると、問題意識が芽生えてこない。国際的な観点(他国の政治制度との比較)、経済的な観点(役員を世襲で固めるような大企業はまず存在しない)など、比較政治論の視点が必要な時なのです。

 

 朝日新聞の論説委員、記者が素通りした世襲問題について、外部の識者は「小渕氏の選対委員長の起用は、世襲議員という圧倒的に有利な条件を与えられてきた。女性の看板として頼るには限界がある」(高安早大教授)と、厳しく指摘しています。

 

 日経は女性活躍のイベント、シンポジウムを腐るほど、企画し紙面に掲載しているのに、政界については無関心のようです。読売新聞には、世襲問題のコメントはどこにも見当たりませんでした。

 

 時代から取り残されていく政界の影響を、経済が受けないはずはありません。日本経済の低迷は政治による方向違いの政策の乱造に起因すると、私は考えています。政界の構造改革に手を付けずに、金融財政に頼り続けていても、日本経済はよくならないと思います。

 

 政治と官僚の関係に嫌気し、転職する有能な官僚は増えています。東大を卒業する学生は、優秀なほど、コンサルタント会社とかマネーファンドを志望するそうです。一方の政界(保守政界)は世襲議員の再生産に励み続ける。そんなことでは「新しい資本主義」は空回りするだけです。

 

 

 

 

 

 

 

 


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