何でもやれとの指示に逆らえない
2021年7月15日
新型コロナ対策で、菅首相はなりふり構わず、「できるものは何でもやれ」と連日、閣僚や関係省庁に檄を飛ばしている姿が想像できます。
連日のコロナ対策の迷走は、焦燥感を強めている菅首相の指示の乱造に起因します。担当者が逆らえず、思いついた対策を提出して、首相の顔色を伺う。法的根拠が曖昧なまま実行するから、すぐ撤回に追い込まれる。
NHKの世論調査では「政権支持が33%。不支持が46%で、政権発足以来の最悪」です。読売では「支持37%。不支持53%で、同じく最悪」です。数字に一喜一憂する首相ですから、焦燥感を強めています。
本人は長期政権を願っているのに「次の首相に誰がふさわしいか」の問い(読売、7/13)に菅首相はたったの4%です。「河野20%、石破18%、小泉15%、安倍11%」で、首相は下位から数えたほうが早い。
これは人気投票みたいなもので、政策能力とは関係ありません。また首相は直接選挙で選ばれるのではありませんから、無視すればいいのです。菅首相はそれができないから焦る。
無派閥出身だから、政権維持のために「虚勢を張る」という振る舞いで権力を誇示しようとする。その「虚勢」がすぐに漏れてくるところみると、内部では首相への反感が強まっているのでしょう。
「お前がぐだぐだ言ったけど、俺の言った通りになっただろう」と、河野ワクチン担当相に得意げに語ったそうです(読売、7/14)。慎重論を押し切って「一日100万回接種」を命じたことの結果の話です。
強引に指示をだし、背くと制裁を加えるのが菅首相の手法です。現場は確信をもてないまま暴走、ワクチンが不足し、「職域接種の新規予約の停止」「自治体の現場の混乱」が起きる。首相はその責任に触れない。
「サミット(先進国首脳会議、英国)は俺が動かしたようなもんだ」。帰国した菅首相が二階自民党幹事長らに語った言葉で、聞いた側はあっけにとられた(文芸春秋8月号)。そうまで言うのかなあ。「俺が動かした」は、首脳首脳声明に台湾問題に言及したことを指すらしいのです。
さらに「各国首脳と人脈ができた」とも言った(読売)。たった一回のサミットに臨んだくらいで、「人脈ができた」と、老練な政治家は普通は言わない。人脈ができたから長期政権に臨めるの意味でしょう。
最近の混乱に触れると、政府は酒類提供禁止に応じない飲食店に、「取引停止をお願いする」と、卸売り業者に圧力をかけ、猛反対にあってすぐ撤回しました。金融機関にも融資停止を求め、これもすぐに撤回です。
担当の西村経済再生相がもっぱら批判の的となり、辞任要求もでています。これは筋が違う。都議選の不振、政権不支持率の上昇、迫る衆院選を前に、焦った菅首相が強引に指示を乱造していた結果と考えたい。
酒類取引停止問題では、関係閣僚、省庁の協議に首相も出席し、事前説明を受けているとの報道です。自らの責任逃れのために、「具体的な内容は議論していない」と、意味不明の釈明で責任を下に押し付ける。
こんなワイドショー向けの話より、もっと重大なのは、ワクチン接種の対象者の優先順位が間違っていることです。
経済を回すなら、現役世代にまずワクチンを接種し、接種証明書を発行する。証明書があれば、飲食店で酒も飲めるし、イベントにも出入りできる。そうした措置をとっておけば、今の混乱は避けられた。
85歳以上の高齢者、基礎疾患のある人などはともかく、一律に高齢者を優遇したのは間違いです。現役世代が疲弊すれば、経済は回らない。現役世代に支えられる医療保険制度の支えきれない。
さらに大都市部をワクチン接種で優先すべきでした。大都市部からコロナ感染は広がる。感染者が少ない県はその後でも構わない。「ワクチン接種は何事も平等に」という原則が間違っているのです。
国会で野党が西村経済再生相の辞任を迫っています。西村氏の本音は「首相は官邸の指示に従い、了承されていたはず」でしょう。野党が追及すべき課題は他のところにあり、ピントが外れています。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます