伝説的経営者の単純すぎる手口
2018年11月20日
瀕死の日産自動車を再建した辣腕経営者、カルロス・ゴーンが報酬の過少申告で東京地検に逮捕されました。100億円(5年分、1年20億円)の報酬を半分しか申告していなかった。単純すぎる犯罪です。投資を装い自宅を購入させたというのも素朴な手口です。長期にわたる独裁的経営者だからできたとはいえ、巧妙な点がどこにもありません。不思議です。
罪を犯さなければ、伝説的な経営者として名を残せたでしょう。あっさり検察に逮捕されるような犯罪の動機は不可解というしかありません。トップ経営者の国際水準からすれば、並みはずれて高額ではないし、報酬の過少申告も、いずれは発覚したでしょう。日産再建の辣腕ぶりと、幼稚で単純な犯罪との、あまりにも大きな落差に絶句するしかありません。
日産が仏ルノーの傘下に入り、ゴーンは2000年から社長を務めています。今回の不正は15年までの5年分が対象ですから、00年からの15年の期間も同様の過少申告をして、不正蓄財をしていた可能性があります。日産にはその記録があるでしょうから、全容を解明してほしいと思います。
ばれそうになってきたから、いっそのこと逮捕され、罰金を払い、懲役刑の刑期を終えて、時効にかかる不正蓄財をふところにいれよう。そんな読みがあったのでしょうか。もっとも株主代表訴訟が起こされ、巨額の損害賠償金を払わざるをえなくなるかもしれません。
来日以来、長期間の不正か
来日してから長期間、不正に手を染め、ばれなかったため、ずるずると過少申告を続けてきたのか。日本人の西川氏が社長に就任し、内部通報もあり、発覚が迫ったとさとり、ゴーンは覚悟を決めたのか。海外から戻った羽田空港でやすやすと逮捕されたのも、妙な感じを受けます。
日本企業のトップの報酬は、1位がソニーの平井社長の27億円、2位がセブンイレブンのトップのデビット氏で24億円です。10億円以上が10人おり、7人が外国人です。日本のサラリーマンから見て、ゴーンの20億円(申告は10億円)は高額であっても、世界標準からすると、決して法外な金額ではありません。日産が経営再建中なので、高額報酬が目立ってはまずいと、考えただけなのか。
コストカッター(経費削減)、辣腕経営者、このままいけば伝説的な人物の名を欲しいままにしたであろうゴーンがなぜ、単純な不正に手を染めることができたのでしょうか。カネは会社の経理担当を経て、支払われますから、経理がそのことを知らないはずはありません。人事権も握ったワンマン経営者だったから、逆らえなかったとしか考えられません。
国税局が見逃してきたのも不可解
不正に手を貸した日本人も本来なら同罪でしょう。捜査では司法取引(協力すれば、罪を減じる)が行われたそうですから、事実を白状して、ゴーンの逮捕に至ったのでしょう。それにしても、日産のトップに座った2000年から、18年間もばれなかったというのは信じ難いことです。見て見ぬふりを続けた日本人社員は少なからずいたことでしょう。
それに国税局はなぜ気がつかなかったかです。企業が報酬を支払えば、所得税を源泉徴収します。半分の10億円分の源泉徴収しかしなかったとすれば、残りの10億円はヤミ給与であり、脱税です。
国税局は日産に税務調査に定期的に入っています。外部に公表されているゴーンの報酬と、実際の報酬との差異を不審に思ったことはないのか。全額を対象にして、所得税は払い、有価証券報告書には過少申告の金額を載せただけのことなのか、いや脱税までしていたのか。不思議なことだらけと思います。
表現上、世界基準を肯定することで、日本の閉鎖した空間を隠蔽してしまう悪しき評論だと感じました。
つまり、平たく言えば、「だったら貴方方メディアが追求してれば良かったのではないのか!」
そう、並みの人間なら感じます。
>トップ経営者の国際水準からすれば、並みはずれて高額ではない
動機はむしろこれでしょう。
ファンダーでもなく、危機に乗じて、リストラを断行させるために社長に据えたのですから、他人に血を流させておきながら自分は国際水準の給与を得るというのは日本的"情緒"にはまったく合いません。
むしろ、「自分は社長としてゼロ円でも良い」という"武士は食わねど的"な姿勢を示さないと、社内外に示しがつきません。
さらに言えば、経営指標を健全化するまでの"ピンチヒッター"として来るべきで、たとえ白馬の騎士でも、いつまでも居座られるのはゴメンというのが社内の心情でしょう。
つまり、本人はもっと欲しいのに株主総会では通らない。従って、名目を変えたヤミ給与として経費から抜く、という手法を取ったと考えるのが普通だと思います。
>報酬の過少申告も、いずれは発覚したでしょう。日産再建の辣腕ぶりと、幼稚で単純な犯罪との、あまりにも大きな落差に絶句
というか、"役員報酬"では経理が通りませんから、別の科目で計上するしかありません。
手っ取り早いのは"使途不明金""交際費""出張旅費""福利厚生費"など直接的な企業生産活動に関わらない費目か、販促・キックバック的な費目か。あるいは設備投資のバックマージンなどですが、特別背任に問われているのはこの部分かも知れません。
結局、V字回復とかカリスマ経営者とか、持ち上げていたのはマスコミとデフレ時代の経営者だけで、日本には不要な人罪だったと言うのが正解だと思います。