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小池知事の圧勝と安倍首相の下降線

2020年07月06日 | 政治

淀む中央政界の活性化が必要

2020年7月6日

 東京都知事選で現職の小池百合子氏が圧勝しました。コロナ危機対策が現職に有利に働いたほか、自民・公明党が実質的に支援しましたから、勝って当然でした。女性票の60%程度を獲得し、女性政治家にかける期待も大きかったようです。

 

 選挙前に、小池氏を批判する暴露的な本「女帝/小池百合子」が出版され、学歴詐称(カイロ大卒)説が蒸し返されたり、「女性であることを巧みに利用し、複数の政党を渡り歩いてきた政治経歴」を厳しく批判する指摘もありました。

 

 多くの有権者は「ハーバード大卒の詐称ならともかく、途上国の大学を卒業したとかしないとかはどうでもいいことだ」と、考えたのでしょう。「エジプトへ個人的な見返りに血税300億円を提供」とのネット投稿にはギョッとしました。ODA(政府開発援助)供与の意味らしく、有権者は「ODA予算を議員個人が自由にできるわけはない」とくらいの判断はしたのでしょう。

 

 新著はベストセラーになり、こうした個人批判が知事選に影響を与えるかどうかが、ひとつの注目点でした。自民党支持層の78%、無党派層の54%、立憲の29%、共産の17%が小池氏に流れた結果(朝日新聞)の圧勝ですから、個人批判の効果は感じられませんでした。

 

 小池氏には、「感染爆発寸前の発言、都市封鎖の示唆、緊急事態宣言、社会経済活動の自粛など、選挙を意識したやりすぎ」との批判があり、検証の必要があります。もっとも世論調査では、「コロナ自粛は適切」が66%(読売、6日朝刊)でしたから、一方的に批判するわけにはいきません。

 

 読売の世論調査では、安倍内閣の支持率は39%、不支持率は52%に達し、「首相が信頼できない」は47%という高さです。河井・元法相夫妻の選挙買収事件で「自民党総裁である安倍首相の責任は大きい」が65%、このことが明らかに影響しています。他にも、モリカケ、桜見、元法相に対する1・5億円の資金支援など、不透明な部分に国民は不信感を抱いてきました。

 

 では自民党の支持率も急落しているかというと、そうではない。政党支持率は自民32%(前回調査34%)です。野党は支持率を伸ばす絶好の機会が訪れたのに立憲5%(同4%)、国民1%(同1%)、共産2%(同3%)にとどまり、野党を押す風はまったく吹いていません。

 

 この点は都知事選と共通するところがあります。小池氏が獲得した366万票(60%)に対し、宇都宮、山本、小野の3氏は合わせても210万票の大差でした。有権者は野党勢力にほとんど期待をかけていない。安倍政権の支持率が低下していっても、小池氏を支援した自民・公明による中央政界の政治構造は変わりそうにない。

 

 都知事の大差の続投が決まり、では、自民党の次期総裁、次期首相はだれになるのか。石破、岸田、河野、小泉氏らの名が挙がっても、エース級が不在だから、麻生副総理の可能性さえささやかれる。つまり、地方政界では小池、吉村(大阪)、鈴木(北海道)らと、存在感を持つ知事が現れているのに、中央政界は人材不足としかいいようがありません。

 

 自民党では、世襲議員が増え、政治が家業化しています。衆院では小選挙区という狭い地域から選出されるため、世襲化しやすい。選挙区が小さいから、議員も小型化しやすい。地盤、看板、カバン、つまり後援会組織、知名度、資金力がものをいう。縁故採用議員とでもいえます。

 

 一方、都道府県は小選挙区よりはるかに広い地域をカバーするため、地域限定の「三バン」に頼って当選するわけにはいかない。直接選挙で大統領を選出するようなところがある。知事選と国政選挙を単純に比較できないにしても、国会議員以上の政策立案能力、アピール力を求められることになります。世襲で当選した知事まずいないでしょう。

 

 コロナ危機で目立っているのは、若い世代の知事らの活躍です。「いづれは国政に転じてほしい」という期待をかけられている知事もおります。日本の首相は間接選挙で選ばれますから、知事から一足飛びに首相というわけにはいきません。どこかの政党に属して、国政選挙にうってでて、階段を上っていく。金融財政、安全保障、通商、外交など分野の経験も積む必要があります。

 

 自民党政治のもとでは、ますます世襲化が進み、当選回数も重ねやすく、閣僚の道も近づく。安倍首相はもちろん、麻生、石破、岸田、小泉、河野氏らは世襲組です。そうした構造が中央政界淀の淀みの大きな原因になっている。外部から人材の参入が進まず、保守政界はガラパゴス化する。

 

 世襲組はガラパゴスを守ろうとする。それを打破するには、知事経験者が国政に転進し、新しい血を持ち込むことが契機になり得る。それを期待します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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