新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

全国紙の元記者・中村仁がジャーナリストの経験を生かしたブログ
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災害時も略奪が起きない姿の発信を

2018年09月10日 | 社会

 

日本を知らす機会を逃すな

2018年8月10日

 北海道の大地震、全道停電のニュースを見て、米国での勤務が長かった知人がコメントを寄せてきました。「全く略奪が起こっていない。略奪どころか店員が一人一人にペットボトルの水を手渡している。これこそ日本が世界に誇る姿なのだ。思わず涙ぐみました」。


 知人は続けます。「日本の民意の高さ、秩序維持の良識の表れだ。この姿を世界に発信し、世界平和の推進に貢献すべきではないでしょうか」。6日の地震発生後、テレビや新聞は被災地の惨状、被害者の救出、自衛隊の出動、全道停電の様子などはくまなく報道してはいました。何かが足りない。


 自民党総裁選を直前にして、安倍首相が北海道に向かい、操業が止まっている苫東厚真火力発電所の前などで状況を聞き、何やら指示を出している様子が放映されました。私は知人がいう「略奪が起きない日本の姿を世界に発信せよ」まで、官邸や側近も頭が回らなかったのでしょうか。


国内向けの思考に終始


 官邸もテレビも新聞も、国内向けの頭での行動、報道に終始しているのです。「惨事は惨事でも、惨事の裏側に日本の別の姿が浮かび上がっている。それを世界に知らせよう」と、考える政府関係者、メディア関係者がいなかったのですかね。


 居合わせた外国人は「こんな時に略奪が起きないのは、日本くらいではないか」と、思ったに違いありません。6日の夕刊の記事には、「停電した真っ暗な札幌中心部を歩く人たち」の写真が掲載されています。記事でも「コンビニ店の前に約30人が列を作り、食べ物や飲み物を求めた」とあります。


 2011年3月の東日本大震災の際、米国紙は「日本ではなぜ略奪が起きないのか」と、日本社会の秩序正しさを称賛する記事を書きました。別の米国報道機関は、「05年のハリケーン・カトリーナや10年のハイチ大地震などでは住民による略奪が付きものだったのに、無法状態が日本では見られない」と。


震災時に感じる日本人への尊敬


 ABCテレビは「スーパーやコンビニの前で、静かに整然と住民が並び、長蛇の列が乱れない」との報道です。阪神大震災の時は、「日本人の我慢。われわれも日本から学ぶべきだ。同情の気持ちと深い尊敬の念を表したい」と書いた米紙がありました。


 日本人からすると、当然の行動でも、外国人からみると、尊敬に値する行動となります。もっとも、復旧が長引くと、留守宅への空き巣や店舗荒らし、募金詐欺などが起きます。それに比べ、外国のは、ギャングか暴徒による襲撃、略奪といっていいのでしょう。


 日本の対外イメージは、このところよくありません。古くは太平洋戦争当時の残虐な行動、なにかと蒸し返される従軍慰安婦、閣僚の靖国参拝の問題といい、日本を悪者にしたがる勢力があります。今からでも「現在の日本の国民の姿は、災害で街や生活が大混乱に陥っても、スーパーの前の我慢強く、整然と並び、順番を待つところに表れている」と、報道すべきです。







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