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天皇退位で皇室は率直に語りだした

2016年12月01日 | 政治

 

過去を引きずる硬直的な識者も

2016年12月1日

 天皇陛下の退位問題を考える有識者会議のヒアリングが終わりました。天皇が退位を望んでいることをにじませた「お言葉」の表明(8月)に続き、誕生日を迎えた皇后が記者会の質問に答えた思い(10月)、51歳になられた秋篠宮の誕生日の記者会見(11月)の発言に接すると、皇室は国民に率直な考え方を伝えようとしていることに驚きを覚えます。一方、皇后の発言の影響なのか、ほとんどの新聞から「生前退位」の「生前」という表現が消え、単に「退位」になっていました。


 それに対する識者の態度表明の中には、「国民からも皇室からも、遊離した人たちが皇室問題の回りに存在し、有形無形の影響力を行使している」と、感じないわけにはいきませんでした。その一方で、識者の中には、ご高齢の中で努力されている天皇を思う気持ちが強い方は何人もおられました。その意味では、皇室問題を取り巻く複雑な実態が分かりました。


 識者のなかには、天皇の思いを突き放すような発言もありました。「天皇の仕事は祈ること。国民の前に姿を見せなくても、任務を怠ることにはならない」(渡部昇一氏)、「天皇の高齢問題と国家のあり方の問題は分けて考えることだ。国家の基盤は軽々変えてはならない」(櫻井よしこ氏)、「天皇がご自分で拡大した役割を引き継がせたい意向のようだ。個人的な解釈による役割を次の天皇に課すことなる」(平川祐弘氏)などですね。相当な昔からの過去を引きずっている感じです。


きっぱりと語った秋篠宮


 秋篠宮は、「天皇は存在するだけでいいという意見の人もいます」との記者の問いに、「象徴としてのあるべき姿を模索し、考えてこられた結果が、今の天皇の活動です」、さらに「私もその考えに非常に近い」とも述べました。「被災地の慰問は極力やめ、お言葉のみでいい」(今谷明氏)と極論を語った人に、率直に反論した形です。


 秋篠宮は皇室の将来にも触れ、「高齢化の一方で、女性の皇族が非常に多い。結婚すれば、皇族でなくなる。皇族の同じ量の活動を今後も続けられるかというと、難しい」と、はっきりおっしゃいました。世間一般が認識していることでも、皇族の方の口から聞かされると、言葉の重みが違います。


 天皇の年齢は82歳(在位28年)、皇太子は56歳、秋篠宮51歳です。皇太子が継承者になっても、在位26年で82歳となり、次の高齢化問題がすぐにやってきます。そのような状態なのに、退位否定は16人中7人に上りました。あと1人で半数が反対派となるところでした。


 最終日のヒアリングで、「天皇は存在することに最大の意義がある。公的行為ができなくなることと、退位の間には飛躍がある」(八木秀次・麗澤大教授)と、これまた突き放した言い方する識者がおり、驚きました。天皇の高齢、健康問題より、天皇制という制度の維持に至上の価値を置く考え方、というか宗教なのでしょうか。秋篠宮が言い切ったように、このままでは、天皇制という制度は残っても、実体が空洞化していくのです。


特定のグループからの識者も


 随分、割り切った言い方をする学者だと思い、調べてみましたら、産経新聞の正論グループの一人、「新しい歴史教科書をつくる会」の会長です。安倍首相のブレーンとの説明も読みました。安倍政権との近さから渡部氏、櫻井氏といい、保守主義かつ国家主義的な思想・考え方を持つ人たちが何人も動員されている印象です。「言うだけは言わせておこう」ですかね。


 冒頭に触れました皇后が誕生日のコメントの中で、報道における表現が「生前退位」だったことも、衝撃を受けたと、おっしゃっておりました。「歴史の書物の中でも、こういう表現に接したことが一度もなかった」とも、述べました。これほどきつい表現を皇室の方から聞いたことはまずないほど率直で、私もショックを受けました。そこで自分のブログで「生前は余分な言葉。単に退位で意味が通じる」と書きました。


 今日の新聞を開きますと、「生前退位」という表現は姿ほとんどを消し、「天皇の退位」となっていました。いいことです。独特というか特殊な天皇観や国家意識を持つ産経新聞には、「譲位」という表現がありました。「譲位」という規定はそれこそ皇室典範にはないですよね。さらに天皇側が主語になって「譲位」というと、「天皇の意思で皇位を譲る」と受け取られ、新たな問題が起きます。誤解を生む言葉です。「退位」が正解です。


 もうひとつ安心したのは、16人中、「退位を容認」が9人、うち「一代限りの特例法を容認」が5人でした。多数決主義ではないせよ、注目していいですね。官邸は、特例法を国会で通しておいて、時間をかけながら皇室典範全般の課題を精査していくという考えのようですね。現実的な選択肢は二段階方式ではないですか。何年後かは、準備期間がどの程度、必要かを第一に考え、その間はできるだけ公務の分担を進めなければなりません。


 


 





 

 



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