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急拡大局面で起こるリスクへの備え

2018年01月17日 | コンサルティング

 「2017年に日本を訪れた外国人による消費額は、前年比17.8%増で4兆円を超え、訪日客数も19.3%増の2869万人。ともに5年連続の過去最高・最多であった」と1月16日に観光庁が報じました。

これらの報道に接すると景気の良い話ですし、実際に訪日客が日本経済の底上げに大きく寄与しているのは事実なのだということがよくわかります。

しかし、同時に訪日客の増加にともなうマイナスの影響も出てきています。たとえば訪日客が集中する観光地では、バスなどの交通機関の混雑や観光客のマナーに地元住民の不満が高まり、「観光公害」との声も上がっているとのことです。

新聞では鎌倉市や京都市の例が挙げられていましたが、私はこうした影響は観光地に留まらないと感じています。

というのは、私が通勤で利用している路線(京浜急行)でも同様のことが起きているからです。京急は羽田空港と都心を結んでいますが、特にここ数年は以前に比べ訪日客と思われる乗客が明らかに増えたと感じています。そしてその数はオリンピック・パラリンピックの開催に伴い、今後ますます増加していくと予想されています。

しかし、現時点でも問題だと感じているのは、訪日客の持つスーツケースなどによる駅のホームや電車内でのスペースの占拠?です。

朝、羽田空港から都心に向かう電車には、海外からの到着時間の関係で訪日客もたくさん乗っています。それが通勤時間帯と重なるため、大きなスーツケースが電車内の混雑にさらに拍車をかける結果になってしまっています。逆に夕方の時間帯は品川駅から羽田空港に向かう訪日客を含めた人であふれかえっていて、時間によってはホームに入ることも難しいくらいになってしまっていることが多いです。

そしてようやく乗車しても、途中で下車するにもドアの前に大きなスーツケースが立ちはだかっていて、降りることもままならないときも少なくないです。

これは決して大げさに言っているわけではなく、毎日のように「困ったな」と感じていますし、もはや電車もホームも飽和状態に近いのではとさえ思っています。

訪日客に関しては、国は今後さらに増やしていくことを目指して、2020年に4千万人の訪日客を目標に掲げているようです。もし鉄道会社や国が何らの対策もしなければ、今後さらにすごい事態になるのではと本当に心配になります。

この例によらず、ある部分のみを急速に拡大してきたことによる、こうした弊害に果たしてどのように対応していくのか、全体を見たうえでの課題解決が急務だと考えます。

数値目標を掲げてそれに向けて急拡大していくとも大切ですが、急速な変化には同時に弊害も起こりうることを常に考えておかなければなりません。

たとえば、働き方改革の推進がますます進む中、女性活躍推の数値目標や残業時間の削減など、数値目標を掲げそれに向けて改革を進めることは大切です。しかし、急激にそれらを進めた場合に起こりうる課題やリスクへの対策も同時に考えておかなければ、思わぬ歪が生じ、マイナスの影響のほうが大きくなってしまうような事態も起こりかねません。

話は戻りますが、先般、羽田空港につながっているある鉄道会社の経営幹部と話をする機会を得たのですが、冒頭の訪日客の増加への対応についてはやはり心配されていました。この問題に関しては競合関係にある他社とも協力して、インフラ全体として対応していかなければ大変なことになるとおっしゃっていました。

訪日客も我々もお互いが気持ちよく接することができるような仕組みとはどういうものか、一人ひとりが考える必要がありそうです。

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