「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「研修のことをじっくり検討したいのですが、それ以外の仕事がいろいろあり過ぎて、今、非常に忙しいんです。高齢者雇用安定法や女性登用についても、制度を見直さなければなりません。来年の予算の決定も間もなくです。管理職として部下の育成もしなければなりませんが、それどころではありません」
これは、先日お打ち合わせをさせていただいたある企業の研修担当の課長から聞いた言葉です。このような言葉を聞くのはこの企業に限ったことではありませんし、今に始まったことでもありません。
日本の管理職は仕事が多角化しプレイングマネージャーでもあるため、目の前の仕事に追われてしまっていて管理職本来の役割を果たせていないと言われて久しいです。このような状況に加え、さらに今年は新型コロナウイルスの影響により在宅勤務が取り入れられているため、上司と部下の双方が直接顔を合わせることが少なくなりました。こうした状況の下、部下の育成はこれまで以上に難しくなっているのではないかと感じています。
それを裏付けるように、厚生労働省が毎年行っている能力開発基本調査によると、人材育成の問題点について「人材育成を行う時間がない」をあげている人が多く、令和元年度の調査では49.7%(複数回答)、全体でも3番目の多さでした。
これだけ多くの人がこの点を問題と考えているのにも関わらず、なかなか解決に至っていないのが現状なのですが、少しでも解決に向かうためにはどうすればよいのでしょうか?
一言で「人材育成のための時間がない」と言ってもその背景は様々なため、「こうすればいい」という解決策を見出すのはなかなか難しいのが現実です。逆に改めて管理職の役割の基本に立ち返って考えてみるとどうなるでしょうか。
言うまでもないことですが、管理職の役割は人、モノ、カネという経営資源を使い組織の目標を達成することです。そう考えれば、重要な経営資源である部下を育てることに注力することは管理職として欠かせない役割であす。「時間がない」ことを理由にして取り組まないということは本来の役割を果たしていないと言わざるを得ないことになるのです。
鶏が先か卵が先かと同様の議論になってしまうかもしれませんが、部下を育てる時間がなかなか取れない状況であるからこそ、逆に積極的に部下を育てることに力を入れていくことが必要なのではないでしょうか。
つまり、部下育成に力を入れた結果として現状よりも部下が成長すれば、現在管理職が担っている仕事や役割を分けて部下に担ってもらうことも期待できます。そこでできた新たな時間をさらなる部下の育成にあてることができるという、良い流れを生むことにつながると思うのです。
日々目の前の仕事に追われて「部下を育成する時間がない」と考えていらっしゃる管理職の皆様、コロナ禍もあり、これまで以上に厳しい状況が続いていらっしゃると思います。しかし、「忙しいからこそ、先を見据えて部下を育成する」ことを忘れずに、頑張っていただきますようお願いいたします。