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カレーの市民

2014年06月08日 | コンサルティング

私がはじめてこの彫刻を見たとき、これは何か重い罪を犯して引かれて行く犯罪者たちだと思いました。彼らの表情は暗く、足取りは重く、全身から恐怖と絶望がにじみ出ているからです。
しかし、このロダンの彫刻「カレーの市民」は、まぎれもなく英雄(ヒーロー)たちの群像です。

カレー(Calais)は、ドーバー海峡を挟んだイギリスの対岸にある北フランスの港町です。

百年戦争中の1347年、イングランド軍はカレーを長期間包囲し、兵糧攻めにしました。カレーの人々は飢餓に苦しみ、ついに降伏します。そのときに、多くの市民の命を救うためウスターシュ・ド・サン・ピエールと5人の市民がイングランド軍に出頭し、自らの命を差し出すことで他の市民を守ったという逸話が残っています。つまり、彼らはまぎれもなくカレーを救った英雄たちです。

1884年、カレー市は「恩人」サン・ピエールの記念碑建設を決定し、ロダンに制作を依頼しました。ところが出来上がったのは、サン・ピエールと5人の市民が首に縄を巻いて裸足で市の門を出て行く群像でした。
華やかで力強い英雄像を期待していた市当局は、当初これを拒否し、ようやく除幕式が行なわれたのは完成後7年経ってからでした。

さて、弊社は管理・監督職への昇格者に対する研修をよく行います。
研修の中でリーダーシップについて考えていただくのですが、受講者に「リーダーの条件とはなんでしょう?」とたずねると、実に様ざまな答えが返ってきます。

「では、リーダーの条件として1つだけを残すとすれば何でしょう?」とお聞きすると、残るのはやはり「責任」という言葉になります。それは、分かりやすく言えば「逃げない」ということです。

「カレーの市民」を見るたびに、リーダーとは「逃げない」人なのだという重い事実を見せつけられる気がします。
たとえ小さな組織であっても、新しくリーダーとなった方は、「カレーの市民」を一度じっくりと見ることをお勧めします。

上野の国立西洋美術館の前庭に、この彫刻はあります。

(人材育成社)


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