「99人以下の中小企業の社員が辞めずにイキイキ働くようになる」を実現する人材育成社です。
「Aはとても頑張ってくれています。来期はリーダーに昇格させたいと思っています」
「Bは皆があまりやらない事務所の整理整頓をよくやってくれるので、とても助かっています」
「Cはいつも始業時間ぎりぎりに出社しますね。仕事中はもくもくと仕事をしていますから仕事は早いですし、ミスは少ないです。しかし、終業時間になるとすぐ帰ります。職場の者とあまり一緒に飲みにも行かないですし、何を考えているのかわかりません。私生活を重視しているんですかねぇ、今の若い者は・・・」
中小企業の社長(中小企業の社長に限ったことではないかもしれませんが)と話をしていると、こうした話をよく聞くことがあります。
AやBに対しては目をかけているメンバーなのか、嬉しそうな表情で話をされますし、評価も高いようです。一方、Cの話の際はややネガティブな表情をされますし、評価もAとBよりは低いようです。
この社長には、その後もコンサルティングで伺うたびに継続的に話をお聞きしていますが、AやBとは毎日のようにランチを共にしたり、アフター5に頻繁に飲みに行ったりしているようです。反対に、Cとは社内にいるときも社長の方から積極的に話しかけることはあまりないことがわかりました。
つまり、この社長は自分が目をかけているメンバーとだけ、仕事以外を含め共にする時間が長いのです。共にする時間が長くなると、彼らから様々な情報が入りますし、彼らも社長が喜ぶような話を提供することが多くなるようです。
その結果、社長は彼らとの時間をますます大事にするようになったようですし、彼らから聞かされる話をそのまま受け止めてしまい、仕事の配分を決めたり指示をしたりする際の情報として活用していることもわかってきました。
これは、まさに社会心理学でいうところの「内集団バイアス」がかかっている状態です。
自分が所属していたり、自分の身近な集団の中にいたりする人は、外の集団にいる人と比べると実際には優劣の差がないにもかかわらず、人格や能力が優れていると感じて評価してしまうことで、分かり易く言えば、ひいきをしてしまうような感情です。
冒頭の例で言えば、AとBの評価と比べCへの評価が低いのは、社長にとって身近な存在ではない、つまり内集団にいるメンバーでないことが影響しているのかもしれません。
Cは出社時間こそぎりぎりではありますが、始業時間には間に合って仕事をし、やるべきことをやってきちんと成果もあげて、終業時間には仕事を終わらせているのです。同僚とあまり飲みに行くことはないのかもしれませんが、やるべき仕事はきちんとやっているわけで、本来は十分に評価に値するはずです。
それが、あまり時間を共有することもないため社長からすると外集団に位置していることになる結果、評価が高くないわけです。このようなことを続けてしまうと、外集団にいるメンバーはどんどんやる気が下がってしまいかねません。また、反対に内集団にいるメンバーは社長の顔色ばかり見て仕事をするようになってしまうかもしれません。
人は誰でも、話しやすい人とそうでない人がいたり、身近な存在に感じる人がいる一方で、そのように感じない人がいたりします。実際、組織にいれば多かれ少なかれこういうことはあります。
しかし、社長という立場でありながら、固定したメンバーとだけ食事をし、そこから得られる情報を鵜呑みにしてしまうのは非常に問題です。
もちろん、食事を通して仕事中では知ることのできない社員の人柄に触れられるのは、社長にとっては有効だと思います。
しかし、もし、そのような形で社員から様々な情報を得たいと考えるのであれば、メンバーを特定の者に固定しない(内集団と外集団という区分けをしない)ことが大切です。
社長が社員と時間を共有する際には、ぜひ固定したメンバーではなく、広く公平に接点を持つように心がける。これが社員から正確な情報を聞き出したり、社員のやる気を高めたりする際に必要なポイントです。