先日、映画「終戦のエンペラー」を試写会で公開前に観ることができました。
連合国が日本を占領した時の話は、過去に白洲次郎や吉田茂を主人公にしたNHKのドラマなどで見たことがありますが、今回の「終戦のエンペラー」はこれまでのものとは視点が違い、アメリカ軍による占領政策に焦点を当て描いているところが新鮮でした。映画を観終わった後には、昭和天皇とマッカーサーが並んで撮った有名な写真の意味の理解が深まったようにも感じました。
映画は、1945年8月、日本が連合国に降伏し、第2次世界大戦が終結。ダグラス・マッカーサー元帥が日本に降り立つところから始まります。その後GHQが日本に置かれ、米軍統治が始まるのですが、そんな中、日本文化を研究し日本に対して特別な思いを抱くボナー・フェラーズ准将は、マッカーサーから太平洋戦争の真の意味での責任者は一体誰なのかを調査するよう極秘に命じられ、独自に調べを開始します。
映画の中で印象的な場面がいくつかありましたが、一つは、昭和天皇役を演じた片岡孝太郎さんです。役者が天皇を演じることなど、神格化されていた当時ならご法度だったでしょうが、片岡さんは声も雰囲気もとても昭和天皇に似ていました。
また、この映画は皇居の前でも撮影を行っているのですが、やはり相当の制約があったそうです。そのため、多くの撮影をニュージーランドで行い、皇居での撮影は限られた時間の中で行うために、歩数を含め念入りにシミュレーションを行って、二重橋の前の撮影に臨んだのだそうです。
そして、何と言ってもマッカーサーと昭和天皇の会話のシーンが印象的でした。マッカーサーは日本を立て直すために、昭和天皇は戦争を終わらせるための会談であったことが感じられました。さらに、エンドロールの彼らのその後の人生にも興味をそそられました。
さて、フェラーズの調査は戦時中の日本独自の価値観や、文化に翻弄され難航しますが、GHQは最終的に日本人が持つ価値観を尊重しました。
フェラーズから報告を受けたマッカーサーも当時の天皇の存在をはじめとした日本人の精神構造を理解しようとしました。もしそうした理解が得られなかったならば、日本の再生はなかったのだろうと思います。
組織もそうですが、理念やアイデンティテイは歴史の中で時間をかけて作られるものであり、組織の根幹をなすものです。
現在では企業合併や統合などが日常的に起こりうるものです。相手のコンテクストを理解しようと努力することは必須であり、それを軽視した合併や統合は成しえないとこの映画を観て改めて思いました。
(人材育成社)