
「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「今年は入社式も新入社員研修も取りやめになりました」
これはこの2週間ほどの間に、様々な企業の研修担当者からお聞きした言葉です。
新型コロナウィルスの影響により、弊社でも2月最終週の後半から研修やセミナーの中止や延期の連絡が続々と入り始め、4月末までに依頼をされていた研修やセミナーの実に9割がなくなってしまっています。
こうした中で最近特に気になっているのは、今後、研修やセミナーなどの人材育成の必要性自体が問われることにならないかということです。
冒頭の企業のように、新入社員研修を中止にするとの連絡をくださった研修担当者には今後の対応を伺っています。そうするとほとんどの企業は4月1日の入社後は即各部署に配属し、その後は先輩社員によってOJTを行うとのことです。
こちらから「では、感染が一段落したら新入社員研修は実施されるのですか?」とお聞きすると、答えも各社ほぼ同様です。「未定です。しかし、たぶん今年はやらないことになるでしょう。初夏のころは忙しいですし。そもそも初夏に今の状況が終息しているかわかりませんからね。その代わりに、秋くらいにフォロー研修をやることを検討しようと考えています」とのことです。
現在、日本を含む世界が過去に経験したことのないような事態に直面しているわけですから、上記のような対応はいたし方ないことだとは思います。
しかし同時に心配に思うのは、人材育成に関する来年以降の対応です。
現在は新入社員研修のみならず、他の階層の研修も延期や中止になっているのですが、そのような一旦止めてしまった人材育成を再開することができるのかということです。
研修やセミナーなどによる人材の育成は、必ずしも即効性を望めるものではありません。新入社員研修を例にあげるならば、今年研修を受講せずに配属された新入社員と、過去の研修を受けた先輩社員との差が歴然としていればよいのですが、短期間では必ずしもそれが明確に現れるとは限らないです。
薬で言えば、漢方薬のようにじわりじわりと効いてくるもので、効果が現れるにはそれなりの時間が必要です。しかし、一定程度のスパンで見れば成長には必ず差がつくものです。
残念ながら、今回の新型コロナウィルスの問題は中小企業はもちろんのこと、大企業であっても売り上げや利益に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。
そして、こうした先が見通せない状況の中では、ある程度費用も時間もかかる人材育成は真っ先に節減項目に挙げられ、短期的な判断で後回しという結論になることとには、やむを得ない面もあります。
しかし、きちんとした人材育成を行わないことによる「付け」が回ってくるのは今ではなく数年後であり、程度の差はあれ、それは必ず現れるものなのです。
はたしてその時にどうなっているかを踏まえ、どうか拙速に答えをだすことのようにしていただきたいと切に願っています。