
テレビで、ゆとり世代の扱いにくさを話題にすることがあります。よく見るのは「ちょっと叱ったら会社に来なくなった」という事例です。確かにそういう人もいることはいるでしょうけれど、データの裏付けもなしにそれだけを取り上げてゆとり世代を一括りに見下すのはおかしなことです。
問題は叱るのが下手なバブル世代の上司の方です。とくにひどいのは「叱る」と「怒る」の区別がついていないことです。
怒るとは、単純に相手に自分のネガティブな感情をぶつけることです。叱るとは、感情を使って相手の育成につながるメッセージを送ることです。
怒ることの最大の欠点は、怒った方が「すっきりする」ことです。
いま上司が部下にカミナリを落としたとします。顔を真っ赤にしてガミガミ言っている間、部下は頭を下げ神妙にしています。やがて上司はすっきりして「今度からはちゃんとやるんだぞ。さあ、気持ちを切り替えて仕事を頑張ろう。そうだ、仕事が終わったらちょっと飲みに行くか。もちろん、俺のおごりだ!」と上機嫌になったりします。
言うまでもありませんが、これではダメです。部下も「あの上司が怒ったらしばらく反省のポーズをとっていればいい。怒鳴らせておけばそのうちすっきりして終わるから、ちょろいもんだ。」というやり過ごし術を身に付けます。
一方の「叱る」は決してすっきりしません。ガミガミ言わず、しかし怒りの感情を込めて「なぜ叱っているのか」を具体的にわからせます。しかも、その後の行動が改善したかどうか、しっかりチェックするところまでがワンセットになっているのです。
その結果、叱られた方は二度と同じようなことにならないように行動を変えます。もしも変えなければ、より強く叱られることになるからです。
このように叱ることは怒ることに比べてすっきりしないばかりか、後々の行動の確認までしなければならず、とても面倒なことなのです。
考えてみればバブル期は若手社員も多く、上司も忙しかったのでちょっと怒るだけで手一杯だったのでしょう。
景気が足踏みを続け、人がどんどん減っている現代の会社の中で、「叱る」ことは育成であり管理職の責務でもあります。
「叱る」は技術ですから練習すれば上達します。上達すれば部下は育ち、会社は伸びて行きます。
(人材育成社)