他力本願というと、「他人の力を頼って、自分では何もせずに願いを実現しようとすること」と思っている人が多いようです。ビジネス本にも「他力本願はダメ。自分の力でなんとかすること、すなわち自力本願が大切」などと書いてあるのを見ます。
もちろん、これは全くの誤用です。しかも自力本願なる造語は、本来の解釈からすればデタラメです。
「他力」とは仏教の言葉であり、「他」とは他人の事ではなく、阿弥陀仏すなわち仏様のことです。したがって「他力本願」とは、自己中心的な考えを捨てて本願力(仏様の力)を信じて頼むことを意味しています。
なぜこうした誤用が広まったのかといえば、ひとつには、近代になって日本人が仏教を学ばなくなったことがあると思います。
もうひとつは、「Heaven helps those who help themselves(天は自ら助くる者を助く)」という言葉の影響です。まさに他力本願(誤用)とは真逆のように聞こえます。
この言葉は、サミュエル・スマイルズの著書「自助論」の序文に使われており、これを座右の銘としている大企業の経営者の方もいます。また、これは聖書の中の言葉であると思っている方も多いのですが、実はイソップ物語の言葉です。
さて、正しい意味での「他力本願」と「天は自ら助くる者を助く」ですが、よく考えてみるとほとんど同じことを言っているように思います。
どちらも「自己中心的にならずに最善を尽くせば神様が助けて(救って)くれる」ということです。
「他力本願ではダメ!自力本願で行け!」という人の多くは、他人を押しのけてでも「自分が自分が」と突き進んで行く傾向があるようです。
自己中心的な努力は正しい努力ではありません。
仕事も人材育成も他力本願であるべき。そう思っています。
(人材育成社)
参考:
http://www.shinrankai.or.jp/b/shinsyu/infoshinsyu/qa0405.htm
http://futuremix.org/2003/02/tarikihongan