「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「そんなに、はっきりと伝えていいんですか?」
弊社が管理職研修を担当させていただく際、管理職役と部下役に分かれてロールプレイングをしていただくことがありますが、ロールプレイングの終了後に上司から部下への伝え方の回答例をお示しする際に、冒頭の質問を受けることがあります。
それに対し、私の方から「それではどのように伝えればよいと思いますか?」と受講者へ質問すると、「もっとオブラートに包むように、やんわりと伝えないといけないのかと思っていました。」といった答えが返ってくることがあります。
もちろん、すべてのケースにおいて単刀直入に伝えることが必ずしも良いというわけではありません。しかしあまり遠回しな伝え方ばかりをしていると、こちらの真意が部下へ伝わらなくなってしまうことが懸念されます。
上司が育成を目的に部下へ伝えようとするのであれば、具体的な行為を指摘したり、どのようになってほしいのかをわかりやすく伝えたりすることが必要なことのはずです。しかし、それをせずにオブラートに包んでしまったら、真意はもちろんのこと部下へ成長して欲しいという思いすら伝わらなくなってしまうのではないでしょうか。
それでは、どうして管理職として部下にはっきりと伝えることをためらってしまう人がいるのでしょうか?これには様々な理由があるかと思いますが、一つにはパワーハラスメント(以下「パワハラ」)ととられてしまうことを心配している人がいるようです。本ブログでもこれまでに何度も取り上げていますが、パワハラと指導育成を目的に部下へ冷静かつ具体的に指摘することとは全く異なる行為なのです。しかし残念ながらそこを取り違えてしまっている人が少なからずいます。このように慎重になってしまう背景には、パワハラの問題が顕在化していることがあることも事実です。しかし、このようにパワハラと混同してしまうと、本来しっかり行うべききちんとした指導育成ができなくなってしまいかねませんので、きちんと分けて考えることが必要です。
それ以外の理由としては、「上司として部下から嫌われてしまうことが怖い」という気持ちが働いてしまうこともあるようです。部下から嫌われしまったら今後の仕事がやりにくくなってしまうのではないかと心配してしまうようですが、その気持ちはもちろん理解できます。
それでは、部下からパワハラと誤解されたり嫌われたりせずに、しかし上司として部下へはっきり伝えるには、どうすればよいのでしょうか?
単純ではありますが、それには一方的に伝えるのではなく、部下の反応を確認しながら具体的に伝えること。それに対する部下の言い訳も含めて、それをしっかりと聴くこと。これが大切です。
コミュニケーションの本来の意味を考えてみれば、一方的に情報を提供することではなく、発信者と受信者で情報を共有することの大切さはお分かりいただけることでしょう。
部下の育成をする際には、ぜひ遠回しな伝え方ではなく、具体的にはっきりと伝えること、そして部下の話をしっかりと聴くこと、これを徹底していただきたいと思います。
でも、そこまで努力しても部下から嫌われてしまったら・・・その場合には潔く受け入れ、その中での関係を作っていくように気持ちを切り替えることも大切なのではないでしょうか。