担当者:「応募者はそれなりにいるのですが、なかなか採用したい人がいませんね」
私:「採用基準のハードルが高いのでしょうか?」
担当者:「うちとしては、決して高いとは考えていないです。ビジネスパーソンとして、一般的に求められるスキル以外は求めていません。応募者はいずれも真面目な人が多いのですが、しかし、中途採用者としての魅力がないのです」
これは、先日お会いした製造業の採用担当者から伺った言葉です。
この企業では近年、新卒採用以外に中途採用にも力を入れていて、必要に応じて採用活動を行っているそうです。
この担当者がおっしゃるには、「応募者は真面目だが、公的な資格に限らずどのような知識・経験やスキルを持っているのか、それをうちでどのように活かしてくれるのかがなかなか見えないんです。新卒ではないので、経験を買いたいのですが・・」とのことでした。
この話を伺った数日後、日経新聞に「採りたい人がいない」との記事が掲載されました。そこには、「求職者の多くは『社内でしか通用しないスキルだけ。長い終身雇用で、中途で採りたい人が育っていない。』」とありました。
この状況の背景として日本ならではの横並びの給与や従来型の評価制度、さらに育成方法に問題があると考えられますが、今後改めて必要となるのは、「持ち運び」のできる知識・経験やスキル、つまりはポータブルスキルです。ポータブルスキルとは業種や職種の垣根を越えて、様々な仕事や職場で活用できる汎用性の高いスキルのことです。そして、ポータブルスキルとあわせてそれらを「言語化」できるか=対外的にきちんと示せるのかどうかということが問われます。
実際、弊社がキャリア研修を担当させていただく際に、講義の中で受講者各々に自身のポータブルスキルを確認していただくことがあるのですが、すぐに「〇〇です」と明確に説明することができる人は、それほど多くないように感じています。
また、日経の同じ記事には「求人は人工知能(AI)技術者など数から質へシフトしつつある」ともありました。
多くの業種や企業で人手不足と言われている中だからこそ、一方では「数」でなく応募者の「質」が求めるようにもなってきていています。しかし、この場合の「質」は、上記のポータブルスキルと考えられるでしょうし、それを「言語化」することがますます重要になってきていると言えます。
通常、仕事をしている人は皆それぞれ、経験をもとに一定程度は培ってきた知識とスキルを持っているはずです。
将来、転職するかどうかは別として、培ってきた知識・スキルをさらに磨き上げてポータブルスキルとすること、さらには言語化できることが必要です。現時点でそこまで至っていないのなら、そのために自分が何をするべきかを一度じっくりと考えてみてはいかがでしょうか。