共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日はオラトリオ《メサイア》の完成日〜時の国王が起立した『ハレルヤ』

2022年09月14日 18時55分18秒 | 音楽
今日も暑くなりましたが、そんな中でも小学校の授業はいつも通り展開され、子どもたちは体育やエアコンの無い特別教室で汗を流していました。

今日は久しぶりにあざみ野の音楽教室が休みになったので、残念ながら《雫ノ香珈琲》には行きませんでした。なので、いつものように気軽にブログに載せられるネタがありません。

かと言って「今日はナシ🙅」というのも味気ないので、何らかのネタを探してみることにしました。そうしたら…ありました。

今日9月14日は



ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685〜1759)の代表作のひとつであるオラトリオ《メサイア》が完成した日です。現在ではクリスマス時期前後によく演奏されている《メサイア》ですが、作曲当初は特定のシーズンを念頭に置いていたわけではなかったようです。

イギリスの著述家でシェイクスピア研究家としても知られているチャールズ・ジェネンズ(1700〜1773)が受難週の演奏会のために台本を書き、それを受け取ったヘンデルは早速オラトリオを作曲しました。ジェネンズがいつ頃までに台本を作成させてヘンデルに渡したのかは判っていませんが、自筆譜から見ると1741年8月22日に着手して9月14日は完成させていますから、作曲期間は24日間という驚くべき速さで書かれています。

台本を受け取ったヘンデルは取り憑かれたように楽想が湧き出てきたようで、自筆譜には時にはペンが追いつかずに略号で書かれているところも多々あるようです。また伝説によれば、第20曲のアルトアリア「この方は侮られて」は自らの楽想に感動し、涙を流しながら書いているところを召使が目にしたという説話も残っています。

ところが台本作家のジェネンズは、ヘンデルがあまりにも早くオラトリオが完成したことに不信感を抱いていたようでした。実際にジェネンズは

「ヘンデルは時間をかけて作曲すると言っていたのに、蓋を開けてみれば一ヶ月足らずで完成させてしまった。こんなにも拙速に音楽を作り上げたヘンデルに、私は正直失望を覚えた。もう彼には宗教的テキストを渡さない。」

と述べていたくらいだったのです。

初演は翌年の1742年4月13日にアイルランドのダブリンで『病院の支援と囚人の慰安のための慈善演奏会』というかたちで行われました。この公演は大成功で、公開リハーサルで大評判をとり、本番では通常600人収容の会場に700人が詰め掛けたといわれています。

一方でロンドンでの初演に際しては、

「聖書の物語をオペラ劇場で演奏するなんて」

という教会からの批判を受けてタイトルは《メサイア》とはせず《新しい宗教オラトリオ》と題して行われました。このロンドンでの初演は決して成功とはいえませんでしたが、その後『慈善演奏会』という名目で演奏会を重ねていったことで徐々にロンドンの聴衆に受け入れられていきました。

さて、《メサイア》といえば何をおいても『ハレルヤ』でしょう。



上の楽譜はヘンデルの『ハレルヤ』の自筆譜ですが、かなり丁寧な筆致であることがわかります。

この『ハレルヤ』は《メサイア》第2部を締めくくる華やかな合唱曲で、ロンドンで初演した際に臨席していた国王ジョージ2世が『ハレルヤ』のところで感嘆のあまり立ち上がったため、それ以降『ハレルヤ』のところでは聴衆が立ち上がる習慣ができた…といわれています。もっともこの話は現在ではフェイクといわれていて、本場イギリスで演奏する際にも、このスタンディングの習慣そのものに賛否両論があるようです。

そんなわけで、今日は《メサイア》のクライマックスといっても過言ではない『ハレルヤ』をお聴きいただきたいと思います。初演から280年の時を経て今なお多くの人びとから愛されている、オペラ作曲家ヘンデルの面目躍如といった華やかな世界観をお楽しみください。


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