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まこちん

 石原まこちんというマンガ家がいる。深夜ファミレスに集ってはダラダラ過ごす3人の若者たちを描いた「THE3名様」の作者だ。それを実写化したDVDも販売されているし、先日はWOWOWでも放映されていたから、ある方面では話題となっている作品なのだろう。その彼が、自身も3年間ダラダラと過ごしたニート(Not in Education, Employment or Training、略称NEET =15〜34歳の非労働力人口のうち、通学や職業訓練などを行わない者のこと)の時代に周囲で本当にあったことを、川柳とイラストで綴った「ニートとね自分で言うのは違うのさ」(太田出版)という本を読んだ。私は、一般にニートと呼ばれる若者たちになんらのシンパシーを感じる者ではないが、石原まこちんは、「THE3名様」をビッグコミックスピリッツで読んで以来の密かなファンであるため、話の種になればと一読してみた。 
 あとがきで彼は、
『この本の中で使われている「ニート」という表現は、あくまで分かりやすさ、伝わりやすさを優先した結果でして、僕は「ニート」という言い方、くくり方は賛成してません。(中略)(ニート期につけていた日記には)何もしていないのに大変忙しく日々を過ごしている自分が記されていたのです。「何もしていないのに忙しい」のです。(中略)社会的に見れば何もしていないのですが、僕個人の解釈では、大変充実した日々を送っているのです』
 そうした『魔法のかかったようなシャンバラチックな夢の時間』を石原まこちんが、ニートという言葉が巷間流布してしまったために、魔法が解けてしまって、窮屈な思いをしているだろうと思いを寄せる人々に宛てた「ニート新定義本」である、本著の中から、私がう~んと思わずうなった、川柳のいくつかを著者自身の解説とともに、以下に抜粋してみる。  
 
 ・ゲーム誌がオレのすべての情報源  
(ゲーム情報だけでなく、音楽、映画、流行のプレイスポットなどあらゆる情報をゲーム誌からゲット。友人(ニート)へのウソにも使用されます。「オレよ~、あそこ行ったぜ!ジョイポリス!」)  
 ・床叩き階下の母呼びシカトする
(またの名を、”母の愛・海抜チェック”)   
 ・宝くじ当選日まではバイトしない
(300円で買える夢見る時間・・・ニートの贅沢ですね)  
 ・母親に履歴書書かせる夏の午後
(リビングのテーブル。コツコツ響くペンの音。老眼鏡を掛けた母。脇には国語辞典。ソレを醒めた目で見ながら、キッチンで立ったままガリガリ君を食べるニート・・・。夕方父が帰ってくる前の出来事です) 
 ・フリをしろ!思い悩んでるフリをしろ!
(重要ですね。ただ怠けているだけでは圧力もかかりっぱなしになり、自室までもなんだか居づらくなってしまいます。ここは「ニート」という、時代が作り出してくれた便利な言葉に甘えることです。「おれ・・・大丈夫かな・・・」「不安なんだよ・・・何をしててもさ・・・」など、自分がニートという病気であることを主張することです。これによりまあ、1年間はナマケを許されることでしょう)  
 ・月2度ナメラれぬための雄叫びを
(やはり、優しいだけではニートはナメられますよね。圧力もかけられます。そのバランスをとるのにとても有効なのが、「雄叫び」です。深夜3時過ぎ、皆寝静まったとき、自室の窓やドアを開け放ち叫ぶのです。「どおおおおおおおおあおああああああああおおおおおおお!」)  
 ・減ったのは友とお金と土踏まず
(ニート始めてから失うものは数々ありますが、中でも、ふと見た自分の足の裏がマッ平ら・・・。これは友からのメールが減ったときよりショックでした) 
 ・とりあえずナンデモカンデモメンドくさい
(ニートの半分はこれです) 
 ・無理だからいくら誉めても無理だから
(親兄弟、親友がニートを更生させようとするときによくやる過ちの1つが、この誉め殺しです。「お前の腕ならつとまるって!」「手先起用じゃん!」などなど誉められまくりニヤニヤするニート。あと一息で・・・と思う親兄弟。しかし、ニートのニヤニヤは、その場を穏便にやり過ごすためのウソ笑いにすぎません。心は決まっています。「ゼッテー、働かね!」 )
 ・フリーター!オレラを下に見るんじゃねえ
(ニートという言葉が市民権を得てから、確かにフリーターの鼻の下は伸びたような気がします。親兄弟にも今までより胸を張ることができるようになったことでしょう。それもこれもすべてニートのお陰なのに・・・。しかし、フリーターからの感謝はありません。フリーターからのお説教は受けることはあっても)  

 

 では、最後に私からの一句。
 「おかしくてやがて悲しきニートかな」

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