毎日いろんなことで頭を悩ましながらも、明日のために頑張ろうと自分を励ましています。
疲れるけど、頑張ろう!
弁慶の異変
水曜日の深夜、愛犬・弁慶にえさをやりに行った。しかし、いつもなら私の足音を聞いただけで吠え始めるのに、何の鳴き声もしない。それどころか、姿が見えない。「弁慶!弁慶!」と呼んでみても、何の反応もない。どこにいてもすぐに走って来るあの弁慶がだ・・。
「変だな」
と思って何度も呼んでみたら、犬小屋の中でゴソゴソ音がした。
「ん?」
中をのぞこうとしても深夜だけに暗くて何も見えない。だが、何かがモゾモゾ動く気配は感じられた。いやな気がして入り口の柵を開けて犬小屋の中をのぞいたら、弁慶の影が見えた。
「おい、弁慶、何やってるんだ?」
と怒鳴ってみたら、中でジタバタする様子が伺えた。
「え??」
次第に闇に目が慣れてきた私には、弁慶がおぼろげながら見えてきた。
「立てないのか?」
前脚で床面を掻くものの、後脚にまるで踏ん張りが利かないようで、立ち上がれない。「腰が抜けたのかな?」と思ってみたが、何でそんなことになったのか皆目見当がつかない。
「死んじゃうのかな・・」
いやな予感がした私は、家に戻って妻に相談してみたものの、こんな深夜ではどうしようもない。明日まで待ってそれから対処の仕方を考えようということになった・・。
そして木曜。いつもなら9時近くまで眠っている私が7時に目が覚めてしまった。すぐに起きて弁慶の様子を見に走ったが、まだ弁慶は生きていた・・。ちょっと安心したものの、全く立ち上がれないのは前夜のままで、犬小屋の中でじっとうずくまっているだけだ。
「弁慶、大丈夫か?」
間抜けな私の言葉に腹を立てたのか、弁慶がいきなり吠え始めた。「う~~!!」と低い唸り声も混ぜながら私を威嚇しているようだ。なんで?という気もしたが、
これだけ吠えられればすぐに死んだりはしないだろう、と少しほっとした。だが、やはりこのままほおっておくわけにも行かない、9時過ぎまで待ってかかりつけの獣医に電話してみた。
「大型犬の寿命はだいたい10年くらいですから、老衰症状が出ているのかもしれませんね」
と13・4歳になる弁慶の老いをふまえた一般論を教えてくれたが、昼過ぎに様子を見に来てくれることになった。だが、問題は弁慶が唸り声を上げて近づく者を威嚇することだ。妻がドックフードをやろうとして小屋の中に手を入れたらガブリとやられそうになった。下半身はまるで動かないが、首から上は自由が利くようなので、迂闊に手を出したりはできない。これでは獣医が来てもまともな診察はできないだろう、と心配していたら、案の定、やって来た獣医に向かって吠えまくった。
「これじゃあ、診察は無理ですから、見た感じからの予測しか言えませんが、考えられるのは、背骨から腰にかけての骨に異常が出たってことでしょう。骨折しているかもしれませんね。年老いた大型犬にはよくある症状です」
さらに他にも考えられる病名を幾つかあげながら熱く説明してくれたのだが、途中から話についていけなくなってしまった。私の分かった範囲では、もし骨に異常があって動けないのなら、治る見込みはないだろう。ただ、薬を飲ませることで痛みを和らげ、狂ったように吠えることはなくなるかもしれない。でも、根本的な治療ではないので、歩けるようにはならない・・、というような見立てだった。「有効な手立てがないなら、座して死を待つのみか」と、暗澹たる思いにもなったが、どうしたって老いには勝てない。
「どれくらい持つんでしょうか?」
と思わず直截なことを聞いてしまったが、
「正直分かりませんね。今のままじゃ、とても体に触ることは出来そうもないですから・・」
という返事しか返ってこなかった。
だが、エサは食べるし、水も飲む。ただ、動けない弁慶のために顔のすぐ近くまでエサや水を持っていかねばならないのは一苦労だ。
「猛獣だと思ってくれぐれも気を付けてください」
との獣医の言葉に従って、長い柄杓にエサや水を入れて運んでいくのだが、その間ずっと弁慶が唸り声を上げているから、どうしたってビビってしまう。今は愛犬・弁慶ではなく、自分の身を守ることを第一義として、周りすべてを敵と見なす猛獣となってしまったようだ。
何とか獣医からもらってきた薬は飲んでくれたから、少しずつは楽になるかもしれないが、弁慶のためを思ってあれこれやってやるのに、ちっとも感謝されていない気がして空しい気もする。しかし、これも飼い主の義務、辛抱強くできる限りのことはやっていかねばならないと思っている。
「変だな」
と思って何度も呼んでみたら、犬小屋の中でゴソゴソ音がした。
「ん?」
中をのぞこうとしても深夜だけに暗くて何も見えない。だが、何かがモゾモゾ動く気配は感じられた。いやな気がして入り口の柵を開けて犬小屋の中をのぞいたら、弁慶の影が見えた。
「おい、弁慶、何やってるんだ?」
と怒鳴ってみたら、中でジタバタする様子が伺えた。
「え??」
次第に闇に目が慣れてきた私には、弁慶がおぼろげながら見えてきた。
「立てないのか?」
前脚で床面を掻くものの、後脚にまるで踏ん張りが利かないようで、立ち上がれない。「腰が抜けたのかな?」と思ってみたが、何でそんなことになったのか皆目見当がつかない。
「死んじゃうのかな・・」
いやな予感がした私は、家に戻って妻に相談してみたものの、こんな深夜ではどうしようもない。明日まで待ってそれから対処の仕方を考えようということになった・・。
そして木曜。いつもなら9時近くまで眠っている私が7時に目が覚めてしまった。すぐに起きて弁慶の様子を見に走ったが、まだ弁慶は生きていた・・。ちょっと安心したものの、全く立ち上がれないのは前夜のままで、犬小屋の中でじっとうずくまっているだけだ。
「弁慶、大丈夫か?」
間抜けな私の言葉に腹を立てたのか、弁慶がいきなり吠え始めた。「う~~!!」と低い唸り声も混ぜながら私を威嚇しているようだ。なんで?という気もしたが、
これだけ吠えられればすぐに死んだりはしないだろう、と少しほっとした。だが、やはりこのままほおっておくわけにも行かない、9時過ぎまで待ってかかりつけの獣医に電話してみた。
「大型犬の寿命はだいたい10年くらいですから、老衰症状が出ているのかもしれませんね」
と13・4歳になる弁慶の老いをふまえた一般論を教えてくれたが、昼過ぎに様子を見に来てくれることになった。だが、問題は弁慶が唸り声を上げて近づく者を威嚇することだ。妻がドックフードをやろうとして小屋の中に手を入れたらガブリとやられそうになった。下半身はまるで動かないが、首から上は自由が利くようなので、迂闊に手を出したりはできない。これでは獣医が来てもまともな診察はできないだろう、と心配していたら、案の定、やって来た獣医に向かって吠えまくった。
「これじゃあ、診察は無理ですから、見た感じからの予測しか言えませんが、考えられるのは、背骨から腰にかけての骨に異常が出たってことでしょう。骨折しているかもしれませんね。年老いた大型犬にはよくある症状です」
さらに他にも考えられる病名を幾つかあげながら熱く説明してくれたのだが、途中から話についていけなくなってしまった。私の分かった範囲では、もし骨に異常があって動けないのなら、治る見込みはないだろう。ただ、薬を飲ませることで痛みを和らげ、狂ったように吠えることはなくなるかもしれない。でも、根本的な治療ではないので、歩けるようにはならない・・、というような見立てだった。「有効な手立てがないなら、座して死を待つのみか」と、暗澹たる思いにもなったが、どうしたって老いには勝てない。
「どれくらい持つんでしょうか?」
と思わず直截なことを聞いてしまったが、
「正直分かりませんね。今のままじゃ、とても体に触ることは出来そうもないですから・・」
という返事しか返ってこなかった。
だが、エサは食べるし、水も飲む。ただ、動けない弁慶のために顔のすぐ近くまでエサや水を持っていかねばならないのは一苦労だ。
「猛獣だと思ってくれぐれも気を付けてください」
との獣医の言葉に従って、長い柄杓にエサや水を入れて運んでいくのだが、その間ずっと弁慶が唸り声を上げているから、どうしたってビビってしまう。今は愛犬・弁慶ではなく、自分の身を守ることを第一義として、周りすべてを敵と見なす猛獣となってしまったようだ。
何とか獣医からもらってきた薬は飲んでくれたから、少しずつは楽になるかもしれないが、弁慶のためを思ってあれこれやってやるのに、ちっとも感謝されていない気がして空しい気もする。しかし、これも飼い主の義務、辛抱強くできる限りのことはやっていかねばならないと思っている。
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