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朝三暮四

 昨日の毎日新聞朝刊の一面に、
「鳩山由紀夫首相は21日、10年度税制改革の最大の焦点となっているガソリン税などの暫定税率を廃止したうえで、新たな税制措置に置き換えると発表した。税率は現行水準に据え置き、ガソリン価格などの引き下げを見送った」
とあった。先の衆議院議員選挙での民主党のマニフェストには、「課税根拠を失っており廃止。2.5兆円減税」などと威勢のいいことが記されていたため、首相は公約違反を陳謝したそうだが、昨年のガソリン代高騰の折には、まさに目の敵の如く思っていた暫定税率が結局は今まで通り維持されることになったのは、いくら民主党のマニフェストに重きを置いていない私でも、「嘘つき!!」と文句を言いたくなる。不景気風が一向に収まらない日本では、税収が激減するのは目に見えており、少しでも税収を増やしたい政府が暫定税率の廃止などかできるわけがないと私でさえ分かるのに、政権欲しさにあえてそれを公約にした民主党の未熟さは大いに指弾されるべきだ。
 さらに違和感を持ったのは、首相と記者団との質疑応答を抜粋した記事を読んだときだった。「何これ?」と思う箇所がいくつもあった。例えば、
「私が最終的に得た結論は、地球環境、景気の二つを考えたときに、まず、これは暫定税率の仕組みそのものはいったんは廃止することになりますけれども、問題としては、その税率は維持をするということにいたしました」
「この税収の極めて大きな落ち込みに対処していかなければならない。経済政策などもきちんと打ち出していかなければならない。その思いの下で、暫定税率そのものを維持をすると。暫定税率の仕組みそのものは変わりますけれども、暫定税率の税率部分は維持をすることにいたしました」
 結局何が言いたいのかよく分からないが、この歯切れの悪い会見を読んでいるうちにふと、「列子」に書かれている「朝三暮四」の話を思い出した。

 宋に狙公なる者有り。狙を愛し、之を養って羣(むれ)を成す。能く狙の意を解し、狙も亦公の心を得たり。其の家口を損(へら)して、狙の欲を充せり。
 俄にして匱(とぼ)し。将に其の食を限らんとす。衆狙の己に馴れざるを恐るるや、先ず之を誑(たぶら)かして曰はく、
「若(なんじ)に茅(しょ)を与えんに、朝に三にして暮に四にせん。足らんか」と。
 衆狙皆起って怒る。俄にして日はく、
「若に茅を与えんに、朝に四にして暮に三にせん。足らんか」と。
衆狙皆伏して喜ぶ。

<口語訳>
 宋の国に狙公という人がいた。猿を可愛がって群れをなすほど養っていた。サルの気持ちを理解することができ、猿も同様に主人の心をつかんでいた。自分の家族の食べ物を減らしてまで、猿の食欲を充たしていた。
 ところが急に貧しくなったので、猿に与える餌の茅(どんぐり)を減らすことにした。
猿たちが自分になつかなくなってしまうのではないかと心配したので、まず猿たちを誑かして言った。
「お前たちにどんぐりをやるのに、朝は三つで暮は四つにする。足りるか」
すると猿たちは皆起ち上がって怒りだした。そこで狙公は急に言い変えて、、
「それじゃ、朝は四つで暮は三つにしよう。足りるか」と言うと、
猿たちは皆平伏して喜んだ。

 民主党政権にとって私たちはサルなのだろうか?「暫定」を廃止しすれば大喜びで新税を受け入れるとでも思っているのだろうか。小手先の政策でだまされるほど日本の国民は甘くはないということを彼らは知らないのだろうか・・。
 などと唸ってみたところで、向こう4年間は絶対多数を得た民主党政権はゆるぎないものだ。第一、いくら民主党が失政を重ねたとしても、それを追求するべき野党があまりに腑抜けすぎるから、どうにもならない。なんだか何10年も前の自民党が己の春を謳歌していた頃の状況と変わりないようになってきたような気がする。くだらない・・。
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