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哀悼・・

 弁慶が死んだ・・・。

 午前中はか細い鳴き声を上げていたのに、私たちが出かける時に犬小屋をのぞいた時には律儀にも顔を上げて見送ってくれたのに、戻ってきたら、呼びかけてもまるで反応しなくなっていた。
「弁慶!」
と当てもなく叫ぶ私を尻目に犬小屋の中に入っていった妻が弁慶を撫でてやると、かすかに反応したらしい。
「虫の息だね・・」
真っ赤な目をした妻がそういうから、もう本当にだめなんだろう。さほど苦しまずに逝けるのだから弁慶にとっては幸いなのかもしれない・・。
 その後間もなく、まったく呼吸の音がしなくなってしまったから、死んでしまったと判断するしかなかった・・。後で血統書を見てみたら、平成9年春の生まれとなっていたので、享年12歳半だと分かった。13歳かと思っていただけに1年寿命が短かったような気がしないでもなかったが、大型犬の秋田犬としては天寿を全うした大往生と言ってもいいように思う。
 
 糞尿にまみれた犬小屋の中にいつまでも置いておくのは忍びないので、犬小屋を壊して遺体を出してやって、毛布に包んでやった。妻の誕生日に贈ったかすみ草がまだ元気だったから、妻がそれを毛布の上に捧げた。眠るような顔をしている弁慶を見ると涙が止まらなかった・・。秋田犬は年をとってもベビーフェイスだけに年齢を感じさせないが、「老衰と言われても仕方ないほど年をとっていたんだな」と、あまりに安らかな死に顔を見ながら、弁慶と過ごした時間を振り返ってみた。飼い主としてきちんと弁慶に接してきたか、と問われると返答に困ってしまう。それもすべて己の怠慢のせいだと思えば辛くもあるが・・。

 在りし日の弁慶の姿を写した写真のいくつかを以下に掲げて、死んだ弁慶に哀悼の意を表す・・。


 こんな可愛い犬をそれまで見たことがなかった私と妻は、弁慶に一目ぼれしてしまい、思わず秋田犬専門店から買ってしまった。生後間もない頃なのに体躯が真四角で頑丈そうだったのは今でも目に浮かぶ。しばらく家の中で飼っていたが、家の外で飼い始めた夜にはずっと鳴いていたのが今でも忘れられない。
 弁慶を我が家に招いた細かな経緯は2005年10月19日の記事に書いてあるが、弁慶が家族の一員として確固たる地位を築いていたのがよく分かる。
 その後もたびたびこのブログに登場してきた弁慶だが、やはり寄る年波には勝てない。次第に弁慶の老齢化に話題が行きつくことが多くなり、寂しい思いもしてきた。果たしてこのまま老いさらばえさせてしまってよいものか、そんなことが脳裏をかすめるようになった頃、弁慶が立てなくなってしまった・・。


 先週水曜日の、弁慶が餌を食べなくなった日に撮った写真。これが弁慶の最後の姿になるだろうと覚悟しながら撮ったが、震えてしまったのかピンとがあっていない。苦しかったのだろうが、私が呼びかけるとこちらを向いてくれた。

弁慶、今までありがとう。
ゆっくり休んでくれ。
そのうち私もそばに行くから、また会おう!
それまでしばしの別れだ。
とりあえず、さようなら。
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