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薬指

 犬とのバトルで左手の指を痛めた夜、塾の生徒に状況を説明する時にハタと困ってしまった。
 「痛めた指は何て呼ぶんだったっけ?」
「親指・人差し指・中指・・・」ここまではすぐに出てきたが、問題の指の呼び名がすぐには出てこない。「お父さん指・お母さん指・お兄さん指・・、ああ、お姉さん指か・・」と指を見ながら気付いたが、いい年こいて「お姉さん指」はないだろう。何だったっけ・・。
 「薬指?」
私が口籠っているのを見かねた一人の生徒が助け船を出してくれた。
 「そうそう、薬指。左手の薬指が犬の首輪に挟まって・・」
と説明を続けることができたが、またすぐに詰まってしまった。指の関節が腫れて痛いのだけど、痛い関節は第一関節なのか第二関節なのかが分からない。
 「痛いのは指の関節なんだけれど、第一だったっけ第二だったっけ・・」
 さすがにこれには生徒も確かな知識はないようだったので、後で少し調べてみた。
 『指先に近い方が第一関節です。ちなみに、指先と第一関節の間を末節・第一~二関節の間を中節・第二関節と指の付け根の間を基節と言います』
なるほど、私が痛いのは「左手の薬指の第ニ関節」ということになる。そうだ、第二関節が腫れて痛くて仕方がないのだ。折れてはいないかもしれないが、ヒビくらいは入っているかもしれない・・。かと言って医者に行くつもりはないから我慢するしかないのだけれど。


 だけど、どうして「薬指」なんだろう?不思議でしようがなかったので、「語源辞典」で調べてみた。
『薬を水に溶かすとき、または粉薬をまぜるとき、おもにこの指を用いたからとされている。平安時代の辞書を見ると、「和妙抄」や「類聚名義抄」にはナナシノオヨビ、「色葉字類抄」にはナナシノユビ・ナナシノオユビとある(ユビは古くオヨビ・オユビともいった)。中国で薬指のことを「無名指」と呼んでいたので、その訳語として成立したものだといわれている。
 中世になると、クスシノユビという例が見られるようになり、15~16世紀にはクスシユビが多くなる。これは薬師如来が印を結ぶときに薬指を使うからとする説がある。
 「日葡辞書」(1603年)には、クスシユビ・ブメイノユビ(無名の指)のほかに、ベニサシユビ(紅差し指)があり、紅をさすのに使う指という説明がある。この語は近世に多く見られ、明治時代にも使われた。また「日葡辞書」のクスシユビの項には、薬をつけるときに使う指とあり、その役割のためか、クスシユビはクスリユビに変化し、江戸などで使われ、明治後半以降に一般的になった』
とあった。たまにはこの「語源辞典」も役に立つ時があるんだなあ、と感心してしまったが、なかなか興味深いことが分かってタメになった。

 里芋の湿布でかなり腫れが引いたので、もう大丈夫、と油断して湿布するのを止めたのがいけなかったかもしれない。またぶり返してきているようだ・・。やはりもうしばらくは湿布をしなければいけないようだ。 
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