じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

乃南アサ「しゃぼん玉」

2021-04-05 18:38:41 | Weblog
★ 乃南アサさんの「しゃぼん玉」(新潮文庫)を読んだ。

★ 家庭に恵まれなかったとはいえ、刹那的な生き方しかできない主人公(伊豆見翔人)。とうに二十歳も過ぎたが、住むところも定まらず、食うに困ればひったくりで食つなぐ。遂には人を傷つけてしまった。逃走の途中で行きついた田舎の集落。バイクの事故で動けなくなった老婆を助けたことから、居候をすることに。

★ 隙があれば金品を奪い、バイクを奪い、また逃げればいい。

★ ところが田舎の人々と生活をする中で、働くことの喜びを感じるようになった。人の温かみを知ることができた。彼は今までの自分を振り返り、逃げてばかりだったと反省する。今からでもやり直せるか、また逃げてしまうのか。葛藤に揺れながらも一歩前に進もうと決心する。

★ 待つ人がいるから、行くことができる。しゃぼん玉のように風に流され、触れられれば消えてしまうような人生にケリをつけるために。

★ 主人公、伊豆見翔人の心の変化が楽しい。素朴に生きる人々、しかし彼らもまた悩みを抱えながら生きている。苦しみながらも逃げないこと、老人たちの心に刻まれた年輪が、硬く凝り固まった翔人の心を和らげたのだろう。「ぼうは、ええ子」、主人公の頭をポンポン叩きながら発する老婆のこの言葉が心に響く。

コメント

映画「パラサイト 半地下の家族」

2021-04-05 01:01:02 | Weblog
★ 「メッセージ」に続いて、「パラサイト 半地下の家族」(2019年)を観た。

★ 「北の国から」の記事の中で、「人生はクローズアップでは悲劇だが、ロングショットでは喜劇だ」というチャップリンの言葉を引いたが、この作品は、その逆を行くように感じた。

★ 大雨が降れば水浸しになるような半地下に住む家族。不況下で両親は失業。内職で家族4人、なんとか食いつないでいた。長男は大学受験に失敗し浪人中。予備校へ通う経済的余裕はない。長女もデザインの才能に恵まれながら、こちらも浪人中だ。

★ ある日、長男は友人の紹介で裕福な家のお嬢さんの家庭教師をすることになる。身分を偽って。やがて、妹、父親、母親とそれぞれが素性を偽り、金持ち家族に寄生するようになる。ここまでは、万事計画通り。運気が一変したように思えたのだが・・・。

★ 世界に蔓延する格差の問題。それに学歴偏重のお国柄もあるのだろうか。いわゆる「勝ち組」がルールを決める社会。「負け組」がのし上がるのは至難の業だ。とりわけ経済的には一度落ちたらなかなか這い上がれない。

★ コミカルながら、終盤のドタバタした雰囲気はゾンビ映画のように感じた。
コメント