じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

牧野信一「ゼーロン」

2022-09-01 16:03:57 | Weblog

★ 防災の人いうことで、今朝の朝日新聞には公衆電話の使い方が丁寧に説明してあった。携帯全盛の時代、公衆電話など使ったことのない世代が多くなっているからか。

★ 昨日の朝刊では日本もようやく結核の低蔓延国になったとか。結核は多くの若者の命を奪い、小説にもたびたび取り上げられている。今日は「日本近代短篇小説選」(岩波文庫)から、堀辰雄「死の素描」、梶井基次郎「闇の絵巻」、牧野信一「ゼーロン」を読んだ。

★ 堀も梶井も結核に苦しめられ、若くして亡くなっている。堀の「死の素描」は療養所で生死の狭間を行き来する姿を描いている。明るい文体が印象的だ。梶井の「闇の絵巻」は「闇を愛することを覚えた」山の療養地で、闇をさまよいながら闇の風景を描写している。その背景には結核による闘病の苦しみと死への恐怖があるのかも知れない。

★ 牧野信一は心を病んで生活も破綻し、悲劇的な最期を遂げる。「ゼーロン」は財産をすべて処分し、唯一残ったブロンズ像(「マキノ氏像」)を知人に預けるために、山奥の村に旅をする話。ゼーロンとは彼の馴染みの馬で、かつては気心の知れた名馬であったが、今では駄馬となり、ムチ打たねば動かなくなっている。

★ 最初は優しく接し、ゼーロンの機嫌をとりなそうとする主人公だったが、あまりの駄馬ぶりに愛想がつき、手で打つは、足で蹴るは、石をぶつけるはと、何とか走らせようとするが、一向に思い通りに動いてはくれない。

★ 古代の挿話や中世の騎士物語を盛り込みながら比喩的、幻想的な話になっている。疾走するような文体が特徴だ。

★ さて、台風の動きが気になる。来週は荒れそうだ。

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