★ 梶井基次郎の「檸檬」(新潮文庫)から「雪後」を読んだ。
★ 大学に職を得た男が嫁をもらい、つつましくも穏やかな日を送っている様子が描かれていた。物語中、主人公が妻にチェーホフの「たわむれ」を語る場面がある。
★ 若い男女がそりに乗る。女性は怖がって最初嫌がっていた。しかし、急斜面をすべると「ぼくは、おまえを愛している」という囁きが聞こえてきた。それが男性の囁きなのか、それとも風の音なのかわからない。女性はそれを確かめるために何度もそりで滑るのだが、結局わからないまま。
★ 二人はやがて離れ離れになり、再び会うこともなかったという話。
★ 気になったので原作を読んでみると、少し違っていた。原作では男性が「君を好きだ」と本当に囁いている。不思議に思う女性をいじわるにも観察している。これが「たわむれ」なのだろうか。結末は「雪後」と同じ。
★ チェーホフの方がドラマチックに描かれている気がする。
★ 素晴らしい文学を生んだロシア。それが今は侵略国の誹りを受けている。予備役の兵士を動員するほど、戦況は苦しいようだ。徴兵を目前に海外に逃れる若者も多いとか。指導者はどこで道を誤ったのか。政権は倒れるのか。