★ 塾生から聞いた話。来週の火曜日は午前中授業だという。
★ この日、安倍元首相の「国葬」が行われる。私が小学生の頃、吉田茂元首相の国葬が行われ、その日も授業が半日で終わったから、同じようにするのかと思いきや、そうではないらしい。
★ どうも自治体に「国葬をやめなければ、児童を誘拐し、学校を爆破する」といった物騒な脅迫メールが届いており、その対応らしい。半旗を掲げるのか、黙とうをするのか、そもそも「国葬」の意味は何か。何かと論議のある中、学校にとってみれば渡りに舟か。
★ きな臭い話はさておき、今日は小川洋子さんの「百科事典少女」(「最果てアーケード」講談社文庫所収)を読んだ。胸にジーンとくる話だった。
★ 昭和のイメージがするアーケード商店街。そこに小さな休憩室があり、100冊ほどの本が並べられていた。アーケード商店街のオーナーの娘である11歳の少女は、そこで父親の働く姿を垣間見ながら本を読むのが好きだった。
★ この読書休憩室にクライメイトの女の子(Rちゃん)がやってくるようになった。学校では言葉も交わさない関係であったが、お互いに読書をしながら少しずつ親しくなっていった。主人公の少女が物語などのフィクションを好んでいるのに対して、Rちゃんはノンフィクションを好んだ。そして遂には百科事典を読みだしたのだ。さまざまな知識を吸収しながら、「あ」から「ん」への長い旅が始まった。
★ ところがこのRちゃんが急死してしまう。百科事典を読み切ることはできなかった。
★ Rちゃんと入れ替わるように一人の紳士が読書休憩室を訪れるようになった。Rちゃんのお父さんだった。お父さんは、Rちゃんと同じように百科事典を読み、その記事を一字一句、ノートに書写していった。そして遂に「ん」までたどり着いたのだ。
★ お父さんにとって、百科事典の書写は何だったのか。道半ばで倒れた娘の志を継いだのか。娘との別れの儀式だったのか。
★ お父さんを見守る主人公やアーケードの人々が温かい。
★ 本を買ってもらうごとに「一冊分の厚みだけ自分の世界が広がったようで」という表現が素敵だ。教科書は良い作品を採用しているなぁ。