★ 日本推理作家協会編「ミステリー傑作選7 意外や意外」から星新一さんの「骨」を読んだ。
★ 都会での暮らしや人間関係から解放されるために1人旅(それも廃村のような人のいないところ)を楽しんでいる青年、彼が河原である人物に出会う。その人物は、長年の座禅、修養の結果、悟りを開いたという。
★ その悟りとは、「生命現象とは生きる意欲である」というもの。生きる意志さえ失わなければ決して死なないという。男は自らの不死を証明するため、青年に殺せという。申し出を辞退した青年だったが、それではと男は青年を襲ってきた。青年は意図せず、男をナイフで刺してしまう。
★ 出血多量。血の気を失い、もはや脈もない。しかし、男は生きていた。不死身は本当だったのか。
★ 一夜が明け、精神は確かに生きているようだったが、肉体は急速に滅び始めているようだ。青年は男から必死に逃れようとするのだが、という物語。
★ 悟りを開いたという男はニーチェのツァラトゥストラのようだ。ツァラトゥストラの永遠回帰は、カミュの「シジフォスの神話」のようだ。徒労のような人生も一念の変革で意味を見出すことができるかも。