★ 小学生だったか、中学生だったか、「道徳」の授業で読んだ覚えがある。
★ 菊池寛の「恩讐の彼方に」(青空文庫)を読んだ。
★ 市九郎は、主人の愛妾と恋仲になり、不義を成敗しようとする主人を刺殺して愛妾とともに逃走した。彼らは悪事を重ねながら諸国をめぐり、もはや人を殺すことに抵抗すら感じなくなっていた。
★ その日も、旅の夫婦を襲い、金品や衣服を奪ったが、夫人の髪飾りを奪い損ねたことを妻(かつての主人の愛妾)になじられ、その悪女ぶりに今まで自分が行った悪行に目が覚める。
★ 市九郎は出家し、了海と名のる。そして、諸人救済の大願を果たすため、諸国を行脚、九州に至る。そこで年に数人、時には10人もが崖から転落死するという危険な街道を目の当たりにし、トンネルを掘ろうと決意する。
★ 人々の嘲笑を気にもせず、かつての過ちを悔いながら一つ一つのみを打ち、岩盤を砕いていった。2年、3年、5年、10年と時が経過すると、かつて嘲笑していた人々も力を貸すようになった。
★ トンネルの開通まであと少し。その時、かつての主人の子息が仇討にやってくる。
★ 市九郎の行いは後から思えば若気の至りだが、その行いは自ら償わねばならない。仇討され、あるいは法に裁かれるのならそれはそれで救われようが、自らの良心の呵責というのは厄介だ。悪行を悔い、善行を重ねても彼の行いによって命を奪われた人々の無念は晴れない。贖罪の難しさを感じだ。
★ さて、また三連休。といっても、うちの塾は平常通り。年中無休こそ健康の秘訣か。