★ 横山秀夫さんの「クライマーズ・ハイ」(文春文庫)を読み終えた。面白い作品だった。
★ 地方新聞社が舞台。今までの特ネタといえば連合赤軍事件と大久保清事件。ベテラン記者たちは当時の高揚感を懐かし気に語る。古き良き思い出。新聞社はもはや斜陽に入っているのかも知れない。記事よりも派閥争いや縄張り争いで忙しそうだ。
★ そんな時、日航ジャンボ機123便の事故が起こった。全権を任された悠木という記者が主人公。事故から1週間余りの出来事が熱く語られていく。
★ 怒号飛び交くオフィス。今にも殴り合いが始まるのではという気迫。炸裂する記者魂。スクープを前にした記者たちの高揚感が伝わってくる。抜くか抜かれるか、他者とのスクープ争いも熾烈を極める。
★ 終盤はいささか盛りだくさんになった感がある。しかし、事故原因を巡るクライマックスは手に汗を握る。
★ エンディングの静けさも、型にはまっている感もするが、もそれはそれで心地よい。
☆ 私は若い頃ジャーナリストに憧れ、わずかな期間、ある雑誌社で見習い勤務したが、あのスリリングな日々は忘れられない。同時に、この世界に身を置けば長生きはできないなぁと感じた。それほど魅力的な世界だった。