今日の花
スカシユリ 野菜畑ではいろんな色の百合が次から次へと咲いています。
今の時期にとても大事なみかんの作業に付いてご紹介しましょう。
5月に咲いた柑橘の花は終わり小さな実になっています。その小さな実は半年から一年かけて大きくなり熟して美味しいみかんになります。その間風雨にさらされるとともに害虫や病気にも見舞われます。特に今の梅雨時にはいろんな病気が発生しますし、また害虫の発生時期でもあります。それで果実やみかんの木を病気や害虫から守るためには薬剤散布が欠かせません。人間の食べ物である野菜や穀物そして果物は無農薬で自然に出来たものが理想的ではありますが、地球上の七〇億の人間や狭い日本の中にひしめき合って暮らす人たちの食べ物を安定的に供給するには無農薬自然農法では難しい所があります。
わたしはみかんを始め柑橘類を作って消費者の皆様に販売し召し上がっていただいています。みかん類は飾っておくものではなく食べ物の一つですから美味しさと安全性には特に注意を払っています。美味しい実を取るにはどうすればよいか、それは人間が働くのと一緒で健康で元気な樹を作りよく働いてもらわねばなりません。みかんの木には畑からしっかり栄養を取らせ、病気や害虫から守らねばなりません。今は病気や害虫からみかんの木を守るための作業が仕事です。
みかんの実や木が感染しやすい病気がいくつかありますが、今の時期防がなければならない病気は黒点病・カイヨウ病・ソウカ病などがあります。これらの病気は少しだけなら木にとっても実にとっても健康に影響はないのですが、ひどくなると問題が出てきます。また今の時期にやっつけないと取り除くのが困難になる害虫にカイガラムシ類があります。柑橘にとって被害の大きいカイガラムシはヤノネカイガラです。この害虫は昔は日本にいませんでしたが、戦前のある時期に大陸から侵入しました。ヤノネカイガラにとっては新天地の日本には天敵がいなくて柑橘に甚大な被害を及ぼすようになりました。私の子供のころにはこの小さな害虫を殺すための薬剤が無く天敵もいないので猛威をふるった時期があったようです。その頃はこの虫を殺す方法として大変危険できつい作業ですが、みかんの木を天幕でコッポリ覆い中に青酸ガスを充満させ虫を殺していました。青酸ガスの取り扱いはとても危険な作業でした。その後殺虫剤がたくさん開発されるようになって害虫に対処する方法も変わって来ました。カイガラムシの仲間はかたい殻をかぶっているので薬が効きにくいのです。ヤノネカイガラ虫は今の時期に2齢か3齢でまだ固い殻をもっていないので殺虫剤が効きやすくたたくには今しかないのです。それでもヤノネカイガラ虫を殺すには浸透性の強くて毒性の強い劇物に指定された農薬が必要です。薬剤散布をする私にも毒性は効きますので出来るだけ肺に吸い込まないように、皮膚からも浸透しますので皮膚を出さないようにしなければなりません。水を通さない合羽を来て、長靴にゴム手袋、マスクにゴーグル、これだけ着ると気温が高いと厳しいですよね。福島の原発事故の後始末をしている人たちの大変さが良くわかります。あちらは何を着ていても放射線は容赦なく入って来ますから尚たちが悪いです。
今の時代、お店に並ぶ果物はみんなきれいでヤノネカイガラ虫の付いたみかんなど見たことが無いでしょう。農家は危険に身をさらしながら害虫の防除を徹底的に行っているからです。ヤノネカイガラ虫とはどんなものかご覧に入れましょう。ヤノネカイガラ虫の生態はとても変わっていてそのことについても写真でお見せしたいと思います。黒い殻をかぶっていてみかんの実や葉や茎に付着して木の汁を吸って生きています。木は樹液を吸われますのであまりにも沢山の虫が付くと枯れてしまいます。黒いごまのような姿からこの虫が昆虫であることは想像しにくいのですが、生まれて発生の初めのころを見ると昆虫であることが納得できます。卵から孵化したときの幼虫は足が6本あってみかんの木の上を這いまわります。一日するとメスは定着する場所を決めてそこを動かなくなります。オスのほうは孵化した所の近くで大きくなり成虫になるとちゃんと翅があって飛べるようになります。そして飛び回ってメスを探し交尾しておしまいとなります。メスは最初に定着した所から一生動くことはありません。飛び回るオスは問題ないのですが、定着して木の汁を吸うメスが困るのです。ヤノネカイガラ虫は一年に2回発生します。5・6月と8月頃です。果実に付着するのは2回目に発生した成虫です。この害虫をたたくには6月と8月の末ごろの二回チャンスがあります。その他には冬の休眠期に機械油乳剤で被膜を作り窒息死させる方法もあります。農業において作物の害虫や病気とどう付き合うかは難しい問題です。ヤノネカイガラ虫を殺そうとするとみかんの木の周りで生活している昆虫は皆殺しにしてしまうのです。恐ろしいことですがしばらくの間は沈黙の世界です。それでも自然の再生能力は強くてじきに元には戻ります。やっつけたはずのヤノネカイガラ虫だってどんなに丁寧に薬剤散布をしても全滅はしていません。放っておくとやがて元のように戻ります。
虫の世界のことは面白いことがたくさんあって書いていると長くなりますので、今夜はこの辺で。
薬剤散布の準備
写真で自分を見るとまだ耳が露出していますね。
散布の方法はいろいろあるのですが葉の裏にいるヤノネカイガラ虫をやっつけるには細かな霧での噴霧が必要です。
みかんの葉に付いているヤノネカイガラ虫
たくさんの虫が付くとこのように枝が枯れます。
とても小さい虫ですから拡大してみましょう。
↑の所の虫には穴が開いています。ヤノネカイガラ虫の天敵の寄生パチが出た穴です。何年か前に天敵を中国から移入しました。
果実に着いたヤノネカイガラ虫
これほどたくさん付くと商品にはなりません。栄養分を虫に取られるため果皮が緑のままです。
一般的にはこんな薬剤を使います。
医薬外劇物です。身分証明が無いと買えません。
無農薬・減農薬は消費者が好みますが、生産者も消費者以上に好きです。3Kの仕事はできれば避けたいですからね。
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