河村顕治研究室

健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究に取り組む研究室

医療崩壊

2008-07-22 | Private
先日の結婚式で隣が脊椎外科を専門にしている同期生だったので、たまたま親戚の叔母から相談を受けていた脊柱管狭窄症の手術のことを話し合った。
彼が言うには最近病院では絶対に「手術をしたら良くなりますよ。」とは言わないのだそうだ。
みのもんた氏が手術を受けて経過が良かったせいで手術をすれば良くなると先入観を持たれる脊柱管狭窄症であるが、もともと経年変化で神経にも変性を来しており、手術で除圧したからと言って劇的に改善するものではない。
当然手術によるリスクも多分にある。
彼はそれでも手術を受けたいという患者さんには
「手術は将来寝たきりにならないためで、症状が良くなるものではありません。」
と突き放すのだそうだ。
それでも手術を希望する人だけに手術で起こりうるありとあらゆる悪い可能性を説明し、それで同意したら手術に踏み切るとのこと。
いったいどういうムンテラをするのかと聞いたら、
「手術をしたら死ぬ可能性があります。ひょっとしたら手術中に大地震が起きて大変なことになるかもしれません。さらに手術をしている私自身が心臓発作を起こして手術がストップする可能性もあります。」
などなど、1時間くらい説明するのだそうだ。
そんなバカなと思うが、今の医療現場はそれくらいしないと自分の身を守ることができないらしい。

例えば、手根管症候群で手術をしたからと言ってすぐに手のしびれが取れるわけではない。
そんなことは当たり前で、術前には必ず説明する。
ところが実際に高齢の患者さんで術後すぐの時期に手術をしてしびれが取れないのは医療過誤だとして訴えた人がいるのだそうだ。
要するに、いくら説明しても患者さんは自分の期待していることしか耳に入らないのである。
これで訴えられたらたまらない。
いきおいしなくても良い手術は避けるようになる。

こんな世の中に誰がしたのか知らないが、これでは治療を受ける患者も、医師も救われない。
コメント
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