こないだ23日に放映されたNHKBS1「GREAT RACE 東海道自然歩道1140㎞」を録画視聴した。
トレールランナーの飯野航(いいのわたる)さんが、東京の高尾山から大阪の箕面の森まで16日と17時間29分という日本記録で元気に単独走破したのを見て、久々元気をいただいた。このランナーは、いつもニコニコして、どんなにつらい状況でも悪びれず、エリート意識をいささかもみせないので、好意を持っている。
2019年2月でトレールランニングを卒業してから2年になるが、NHKの「GREAT RACE」は、それ以降も見ていることは見ているが、もうかつての様な羨望も熱も失っていたんだが、飯野さんの走りもさることながら、日本の中部山岳地域の標高1000m前後の、いわば里山と低山を巡る自然歩道というコースは、見ていてつくづくいいなと心がうずいた。
じつは、おととしに東北に帰ってきて、日本のロングトレイルの一つとして震災後整備された「みちのく潮風トレイル」の踏破を2019年春から試みたのだが、福島の相馬をスタートして宮城の石巻まで達した時点で、その秋の大型の台風で、あちこちのルートが寸断されたため、いったん中断していた。昨年は、コロナのせいで歩く機会を逃したので、コロナがそろそろ収まった今年の春から、また始めようかなと年始に考えてはいたのだが、どうしたものか、今年で10年目となる被災地域を歩こうという考えると、気が重くなっているオイラに気づいた。なにか、こう、できるだけ「あの沿岸から遠いところ」に身を置きたいオイラがいることに気づいた。何らかの、病的症候群なのかもしれないが、2019年に相馬をスタートしたときのウキウキ感が薄れている。海沿いの高くて長いコンクリート構造物や、いまだ行き交うダンプカーを目にしたからだろうか。それとも、集落跡を過ぎるたびに慰霊碑に手を合わせる行為が、いつまでも哀しいのか、よく説明できない。歩きを再開しようとするには、もうすこし時間がかかるのかもしれない。
そんなときにこの「東海道自然歩道」を見て、ひさびさにこころがうずいたので、「そうか、いまのオイラは、もっと内陸のやまぐにを歩きたいんだな」という深層心理に気づいた。
そこで、棚に埋もれていた2013年発行の、PEAKS特別編集版「日本のロングトレイル」という雑誌を引っ張り出した。
この雑誌に紹介されているコースのうち
① スノーカントリートレイル34k(群馬県・法師温泉~長野県・苗場山三合目)
② 信越トレイル80k(長野県・斑尾山~新潟県・天水山)
③ 霧ヶ峰・美ヶ原中央分水嶺トレイル38k(長野県・長門牧場~美の塔)
などは、残雪も少なそうで、5月から歩けそうで、夏山シーズンが始まる前の「体力回復トレーニング」にはもってこいのようだ。15k前後までの荷物を背負って、数日あるけば、足腰に力が戻るだろう。(と過信したい)
ロングトレイルに慣れたら、来年以降いよいよ
⑤ 東海道自然歩道1140k(東京・高尾山~大阪・箕面の森)
までに挑戦するのもいいだろうし、2019年に頓挫した
⑥ 難所の大峰奥駆道や熊野古道小辺路67k(和歌山県・高野山~熊野本宮大社)
に再チャレンジするのもいいだろう。
また、若き日に1度歩いたきりの
⑦ 奥秩父主脈線樹走路65k(山梨県・瑞牆山荘~東京都・奥多摩駅)
を、新緑や紅葉時期にゆっくり踏破するのもいいだろう。
さらに、この雑誌には載っていないが、わがみちのくの八幡平山域は、絶好のロングトレイルルートが縦横している。昨年歩いてすっかり気に入った。ふもとの温泉を繋いで、ことしも深く沈潜したい。
いずれも、アルプスのような高山ではないが、高齢者にとってアップダウンは相当なもので、クマさんの生存域の真っただ中に寝泊まりするので、なめてかかることはできないが、テントや食料と、少し重い荷を背負って、数日歩き続けるスタイルは、どんなトレーニングより効果的でありであり、かつあまりヒトにも会わずに毎日にように森林浴にあずかるのだからコロナ時代のフィジカル&メンタルトレーニングには最適な山旅スタイルだろう。
さて、この5月から、まずはどこか歩いてみよう。山菜を少しだけいただきながら。