数年前の12月の日曜日だったか。石垣島の東海岸をNHKFM「きらクラ」を聴きながら歩いているとき、あのアメリカのソプラノ歌手アンナ・モッフォが歌うラフマニノフの「ヴォカリーズ」がリクエスト曲として流された。
なにものかに打ちのめされたように立ち止まって、遠い水平線を見ながら、暖かな12月の風に吹かれてこの歌を聴いた。それまであらゆる歌手や演奏でこの小曲を聴いてきたがアンナ・モッフォの歌うのが最良と思いながら、歌が終わってもMCたちの声がすぐには届いてこなかった。それほどの余韻を残した彼女の「ヴォカリーズ」だった。「この歌には海の風がよく似合う。」
そういえば、「きらクラ」の後継番組「かけクラ」でも12月に入っ「ヴォカリーズ」が流されたが、キャスリーン・バトルの歌うものだったか、やはりアンナほどしっくりこなかった。
とはいえ、この曲は年の瀬の12月に聞く歌としては最良のものと感じるようになった。リクエストがあるのも年の瀬に聴きたいと思うヒト(多分同世代)が多いのだろう。
もう「第九」のエネルギーは必要としないし、定番として聞いていた「メサイヤ」も今年はNHKBSで一度聞いただけ。
今朝は4時の眼ざめ、聞き逃しでラフマニノフのピアノ協奏曲やチェロソナタを聴いた。ことしは、彼の生誕150年、没後80年のアニーバーサルイヤーだったからだろうか、彼の多くの曲を聴いたような気がするが、歳行けば行くほどますます彼の哀愁が肉体化されていると感じるが、年の瀬はまさにこの歌で極まると言える。こんな感覚は「老の鬱」というものだろうか。
さて、明日は新年。吹っ切れるものが何かあるのだろうか。ニューイヤーコンサートがその触媒となってくれるか。
2017年12月のブログから この頃聞いたのかな
sarorun kamuy さん提供 アンナ・モッフォの歌うヴォカリーズ