野草園の一角に、キンポウゲ科サラシナショウマの白い穂が風にそよいでいた。
「今頃咲いているんだ。」
この春、食べ物としていただく、あたらしい山菜の仲間として、
① ユキノシタ科トリアシショウマ(鳥足升麻)
② バラ科ヤマブキショウマ(山吹升麻)
の若芽に出会ったが、この
③キンポウゲ科サラシナショウマ(更科升麻)
とあわせて、花の違いをしっかり覚えたただろうか。みな、微妙に花の時期を異にするものだから、よく比較もできないまま、あっというまに1年が過ぎようとしている。
「だいいち、升麻という言葉の意味だって分からんだろう。」
と天の声が聴こえたので、図鑑の解説を読むと、「升麻」は、その根茎を解熱、発汗、解毒に効用があると漢方で用いられた植物で、本家はこのサラシナショオウマをいうのらしい。
それぞれ分類は異なるが、みな静かな深山に生育し、地味ながら白い房のような花をつけて、葉の様子も3出複葉で似通っている共通点が多いことから「升麻」の名がつけられたのだろう。残念ながら、このサラシナは口に入れていないが、薬用になるならないにかかわらず、みな日本人が山菜として食べてきたようだった。
食べることだけ興味を持って、花の違いや生態を良く調べてこなかったことを悔いる。
「食するばかりでなく、もっと、知り合った植物たちによりそいたい。」
「また、来年があるさ。」
「どんどん、年老いていく・・。」
世界中の人が、あの女王の身に着けていた宝冠や宝石類の大きさや豊富さや輝きに目を奪われただろうが、「賢治信者」たるものは、こころのうちにいつも「注文の多い料理店・序」を経典のように復唱し、野に出向くべきであろう。
わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗や、宝石いりのきものに、かわっているのをたびたび見ました。
わたくしは、そういうきれいなたべものやきものをすきです。
これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです。・・・ (青空文庫から拝借・新字新仮名)
野草園2022.9.21(賢治祭の日に)
キク科ナンブアザミ
キク科フジバカマ
フウロソウ科アサマフウロ
キキョウ科サワギキョウ
ハマウツボ科ナンバンギセル
ユリ科タチシオデの実
スイカズラ科カンボクの実
シソ科キバナアキギリ
ユキノシタ科キレンゲショウマ
キレンゲショウマの花芯(ダイソーマクロレンズ)
野草園のハギたち
ブナ科クヌギの実
クマツヅラ科クサギの実
マメ科キササゲの花
フウロソウ科ゲンノショウコ
ミソハギ科ミソハギ 盆に添える精霊花(ショウリョウバナ) 母と賢治さんに捧げる
ヒガンバナ科ヒガンバナ 彼岸に添える曼殊沙華 賢治さんと母に捧げる
イネ科ススキの花
リンドウ科オヤマリンドウ エゾリンドウとの区別がよくわからんので、オイラは、エゾオヤマノリンドウと呼んでいる。
秋の、宝石のような花や実を眺めていると、それぞれの物語が生まれそうだ。