晴れた1日、昨年同様蔵王古道の会が整備してくれている青麻古道をつたって青麻山(799m)に登る。この登山道は宮城蔵王の絶好の展望地もあり、花も山菜も豊富で、下山後の温泉もありすっかり気に入った。人気が増しているようで平日でもあり昨年は誰にも会わなかったが、今年は10人以上の登山者とすれ違った。
それと、この山はカタクリ、トウコクサイシン、スミレ、ヤマザクラなどの植生から、春のいっときだけ現れるスプリングエフェメラル・ヒメギフチョウさんに逢えるかもしれないというなんだか不思議な確信めいた予感がしていた。途中の休憩地遠白広場や頂上広場には様々チョウが飛び交っていたので、なんだかこの山が初めての出会いの場所になるような予感がしていた。
昨年は、青麻山頂でキアゲハをギフチョウと間違えて小躍りする失態をやらかしたが、ヒメギフチョウはもっと小ぶりでおしり付近の羽根が赤く染まっていることも学習した。
そして、昨日途中の遠白広場でおにぎりを頬張っていると、なにやら付近を忙しく飛び回っている黒白の小ぶりのアゲハじみたチョウを発見。直観的にヒメギフチョウさんだと思い、カメラの動画を回したが、あまりの素早さについて行けず、しばらくするとどこかに消えていった。
下の動画は、その時回したもので唯一飛翔をとらえたものをトリミングし50分の1の速度に編集したものだが、不鮮明で何とも言えないが姿かたちはヒメギフチョウさんのものだ。
そこから1時間の登りで、青麻山山頂広場に辿り着いたが、「いたいた!」どう見ても姿かたちがヒメギフチョウさんたち、なんと広場は彼ら彼女らのデートスポットになっていて、♂は♀を追いかけ、また別の♂があらわれたり、♀が逃げ出したり、カップルが地面に降り立ち交尾めいた行動をとってすばやく大空に舞い上がったり、あるものは山頂のヤマザクラの蜜を吸っては、すぐにあっちに飛び去るし・・・と何ともはや、すばやい動きで、まったくカメラにとらえることができない。
それでも、よくよく見ていると飛び疲れたのか、ときたま草むらに降り立ち数秒程度休む個体がいたので2枚ばかりカメラに収めることができた。
特徴的な縦じまとおしり付近の羽根の朱色が確認されるので、間違いなくヒメギフチョウさんだ。「やっと、逢えた・・・・」
ポットのお湯でカップ麺をいただいたりしながら、30分ばかりチョウを目で追いかけた。
この山のもつ霊力がチョウたちを引き寄せているのかもしれない。。山頂の祠に御礼を言って山を下る。
ものすごいスピードで春を駆け抜けるヒメギフチョウの成虫たち。まもなくメスは草むらのなかからウマノスズクサ科トウコクサイシンだけを見つけ、その葉裏に真珠のような卵を産み付けるという。その仕事を果たしたらチョウたちは天国に舞い上がる。卵は、1週間ほどで孵化し、トウコクサイシンを食草にモリモリと食べながら、次第に大きくなり、初夏には黒褐色の蛹になって、落ち葉の下でまた来る春を夢見て眠りにつく。
スプリングエフェメラル(春のカゲロウ・妖精)とは言いえて妙。50分の1の速度に落としてやっと姿を確認できるほど密度のあるチョウの人生。短いと思うのは怠惰な日々を送るオイラ的なヒトだけだろう。
帰りの道端で花のスプリングエフェメラル・カタクリファミリー発見。7年生のお母さんから糸のような1年生まで、一つどころに集合していた。根っこたちは手を取り合って地中でどんなお話をしているのだろうか。お母さんはやがて天国に、6年生以下は、ヒメギフチョウさんたちのように、やがてまた来る春を夢見て眠りにつく。
青麻山756山展望地から宮城蔵王を望む