今朝のNHK朝ドラ「らんまん」では、東大の田邊教授(実在は、矢田部良吉教授)が牧野万太郎(実在は、牧野富太郎博士)と四国の石鎚山で採取したキレンゲショウマの研究と新種の発表を巡って同時進行の争いがあり、結局田邊教授が先を越して「Kirengeshoma plmate tanabe」と名付け、世界に発表した物語となっていた。
実在の矢田部良吉教授が新属新種の草本として四国のキレンゲショウマを「Kirengeshoma plmate yatabe」と学名を授けたのは史実のようだ。
このドラマを見ていて感ずるところなのだが、現在日本には約7000種の植物が存在しているそうで、そのうち島国日本の地理的条件からか約2000種が日本の固有種ということである。なので、植物学の黎明期である明治の半ばにそんなに新種を発見発表することが稀で名誉であることなのか疑問を持たざるをえない。2000種が固有種ということなら新種と解明することはさして困難なことではなかったと思うのだが、どうなのだろう。
7000種ということであれば、東大の経済力があれば、日本の全草本、木本を標本化することは困難ではなかったろうし、そのうち約30%が世界でまだ発表されていないのだから、世界中の文献を集めていたこだろうし、文献を漁って新種を見つけることは、さして困難ではなかったような気がするのは、素人考えか。世界中の植物学者が特異な環境を持った日本の植物に着目して、当時大勢採取に来日していて、新種の研究競争が行われていたなら分からないでもないが、どうもドラマの新種発表の喜びようは腑に落ちない。(と思うのは、オイラだけなのだろうか)
それはともかく、この8月3日に野草園でお目にかかったキレンゲショウマはまだツボミだったので、もうそろそろ咲いているだろうかと、本日熱中症の危険を顧みず炎天下の同園を訪れて、さっそく「その場所」にいって確かめたのだが、何とまだほとんどがまん丸いツボミのままだった・・・・・・アレ?
おかしい、図鑑には開花が7月~8月とあるので、いかに北国であっても、10日以上たっても変化がないというとはどういうことなんだろう。
もしかしたら、この花、当地には自生しておらず、紀伊半島から四国、九州などの山地に自生しているということなのだが、今年の暑さだと山地の冷気とちがうため開花を渋っているのではないか。と勘ぐる。
念のため近くで草むしりをしていたお姉さんに尋ねてみたら、この株は例年9月頃に開花するということなので、少しは安心した。異常気象のせいではなかったということか。
いずれにしても、あの矢田部教授や牧野博士が新種発表で競わずにはいられなかった特異な美しい花株の末裔が、東北地方の野草園の草むらに、けなげに育っていてくれていることに、心がうごいてその場を後にした。
今年は、花開くまで、何度かここを訪れてみよう。
その矢田部教授だが、Wikipediaによれば、東大を「非職」されたあと、現在の筑波大学の前身の東京高等師範の教授、校長を3年務めており、庶民的には、それほどの失意の立場と思われないのだが、おそらく来週のドラマと同じく、その校長在職時、鎌倉の海で遊泳中に不帰の客となっている。1899年8月7日、47歳の若さでである。あの(ドラマでは)美しい妻と幼い子供らを残してである。(合掌)
野草園で、キレンゲショウマの花の前を通る時、いつも田邊(矢田部)教授のことを思い出すのかも。
矢田部良吉先生Wikipedia
2023年8月3日のキレンゲショウマ(仙台野草園)
2023年8月17日のキレンゲショウマ(仙台野草園)
本日であったキタキチョウさんがマツカゼソウの蜜をいそがしく吸っていた。まるでキレンゲショウマの花のようだ。