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【経営コンサルタントのお勧め図書】 数理でFactを追求 日本はどこに向かおうとしているか

2024-12-24 12:21:00 | 【経営】 経営コンサルタントの本棚

本  【経営コンサルタントのお勧め図書】 数理でFactを追求 日本はどこに向かおうとしているか 

 経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。
 日本経 営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。
 【経営コンサルタントの本棚】は、2012年に、経営コンサルタントがどのような書籍を読んでいるのか知りたいという、ブログ読者の声を反映して企画いたしました。
 幸い、日本で最初に創設された経営コンサルタント団体である日本経営士協会には優秀な経営士・コンサルタントがいらっしゃるので、その中のお一人である酒井闊先生にお声をかけましたところ、ご協力いただけることになりました。
 それが、今日まで継続されていますので、10年余もの長きにわたって、皆様にお届けできていることに誇りを持っています。
【 注 】
 今月は、図版ファイルのページ数が多いためにリンク付きURLにて掲載しています。
本
■    今月のおすすめ

   『「日本はどこに向かおうとしているか
     ~ 数字を正しく見ないと騙される!

      政府も財務省もマスコミもウソを言う! ~」

(高橋洋一著 徳間書店)
  

 

ISBN-13978-4198658489

本

■   数理でFactを追求(はじめに)

 紹介本の著者のYou Tube「高橋洋一チャネル」の直近の登録者数は、120万人です。真面目な政治・経済の個人チャネルで登録者数100万人超えは稀有の存在です。その様な人気の源泉はどこにあるのでしょう。私見ですが、数理経済学者である著者の所見は、自身のその時その時のポジションに関係なく、数理に基づく真実・真理(Fact)を追究し続けていることです。

 その一例を、紹介本からご紹介しましょう。『今から30年ほど前(大蔵省理財局資金第一課資金企画室長のとき)に、・・・国の財政状況を正確に言うために、国のバランスシートを作らざるを得なくなった。その当時、それが出来るのは私に限られていたので、バランスシートを作ったら、それまで大蔵省が主張していた「借金が大きいから財政危機」という話はウソで、(負債以上の)資産があるので危機でないことがわかった。17年前に退官するまでは、対外的に黙っていたが、小泉政権と第一次安倍政権では、バランスシート分析で財政危機ではないと言い、それに基づく(積極財政)政策を実現してきた(紹介本P22,23)』の通り、著者は、当時の大蔵省の意向に反してでも、Factを追求し、そのFactを国・社会の発展のために、タイミングを狙いながら、生かして来たのです。

 それでは、次項で紹介本の注目記事をご紹介しましょう。

本

■ 数理でFactを追求(はじめに)

 紹介本の著者のYou Tube「高橋洋一チャネル」の直近の登録者数は、120万人です。真面目な政治・経済の個人チャネルで登録者数100万人超えは稀有の存在です。その様な人気の源泉はどこにあるのでしょう。私見ですが、数理経済学者である著者の所見は、自身のその時その時のポジションに関係なく、数理に基づく真実・真理(Fact)を追究し続けていることです。

 その一例を、紹介本からご紹介しましょう。『今から30年ほど前(大蔵省理財局資金第一課資金企画室長のとき)に、・・・国の財政状況を正確に言うために、国のバランスシートを作らざるを得なくなった。その当時、それが出来るのは私に限られていたので、バランスシートを作ったら、それまで大蔵省が主張していた「借金が大きいから財政危機」という話はウソで、(負債以上の)資産があるので危機でないことがわかった。17年前に退官するまでは、対外的に黙っていたが、小泉政権と第一次安倍政権では、バランスシート分析で財政危機ではないと言い、それに基づく(積極財政)政策を実現してきた(紹介本P22,23)』の通り、著者は、当時の大蔵省の意向に反してでも、Factを追求し、そのFactを国・社会の発展のために、タイミングを狙いながら、生かして来たのです。

 それでは、次項で紹介本の注目記事をご紹介しましょう。

本

■ 「失われた30年」から脱却し、力強い明日を目指すには

 

【この30年、間違い続ける財務省と日銀】

 筆者の私は、「失われた30年」から脱却し、力強い明日の日本を築くため知見は何かを模索してきました。そこで出会ったのが紹介本です。紹介本の著者が「この30年、間違い続ける財務省と日銀」で指摘する間違いのアンチテーゼが、「失われた30年」から脱却する知見になると思い、著者の指摘する「財務省と日銀の間違い」に焦点を当ててみました。

 その前に「失われた30年」の定義をしておきましょう。「失われた30年」はバブル崩壊後の経済の長期停滞を指します。1989年12月29日(大納会)に、日経平均株価は38,915円87銭を付け、1990年1月から下がり続けます。この時がバブル崩壊と言われています。(2024年2月22日に1989年の大納会の史上最高値を更新(3万9098円68銭)。7月11日には4万2224円02銭をつけました。)

 著者は、バブル期(1987~1990年)の経済環境について次のように述べています。「実は、マクロ経済状況はよかった。インフレ率(コアcpi)は▼0.3~3.3、失業率は2~3%と申し分のないパーフォーマンスだ。株価と土地だけが異常な値上がりだったのである」と。著者はこの後に(1998年ごろ)ブリンストン大学に研究員として派遣されていた時、師であるペン・バーナンキ(ノーベル経済学者)に、係るケースへの対応策を聞いたところ、その答えは、「株などの資産価格だけ上昇しているとき必要なのは、資産価格上昇の原因の除去であり、一般物価や失業率に影響のある金融政策の出番ではない」でした。

 著者は、このバーナンキの答えを頭に置きながら「失われた30年」の原因を次のように指摘しています。『バブルは、証券会社の「財テク商品(営業特金)」と「金融機関の不動産融資」を規制すれば終わりだったにも拘らず、その後の緊縮財政と金融引き締めを行ったのがまずかった。さらにまずいのは、アベノミクスで、その呪縛が一部解かれたが、いまだに緊縮財政が顕在している』と。

 「失われた30年」の原因である「まずさ・間違い」について、〈1〉「金融引き締めの問題点」、〈2〉「緊縮財政の問題点」について、その①「不適切なPB」、その②「過大な社会的割引率4%」の順に、詳しく見てみましょう。

 〈1〉まず、金融引き締めの問題点について触れてみましょう。

 著者の考えは、「マクロ経済のパーフォーマンスの良いときは引き締めをしてはならず、パーフォーマンスの悪いときは金融緩和をすべきことに加え、ビハインド・ザ・カーブ(政策を確実に行うためには、各種のデータが出そろうまで見極めて正しい選択を行う)で実施すべきで、アヘッド・オブ・ザ・カーブ(先手を打つ)による見切り発車は、間違った選択になる」です。

 バブル直後のパーフォーマンスの良い時にも拘わらず、バブル潰しのために、当時の三重野総裁は引き締めを行った。また、2008年のリーマンショックの時、先進国の中で唯一金融緩和をしなかった日銀(白川総裁時代)の罪は重い。デフレのA級戦犯は日銀、と著者は言います。

 一方、2013年、第二次安倍内閣下で着任した黒田総裁は、マネタリーベースを2年で2倍にする量的金融緩和政策を実施し(黒田政策について、当時のFRB議長のバーナンキは「不十分で中途半端である」と評した。バーナンキはデフレ脱却のため、米のマネタリーベースを約5倍にする大規模な緩和を実施した)、失業率の改善や実質賃金のプラス化などを図れたものの、デフレからの脱却はできないまま2023年4月植田総裁に引継ぎました。植田総裁は2024年3月「金利のある世界」を目指し、+0.1%(▼0.1~0⇒0~0.1)の利上げに踏み切りました。しかし、この時期、名目賃金が+1.9%に対し実質賃金は▼1.4%、GDPギャップが15兆円程度ある等を考えると、植田施策はアヘッド・オブ・ザ・カーブであり、著者は、見切り発車の落第と評価します。

 日本銀行は、「無謬性」(自分は正しい)の姿勢と、経済パーフォーマンスよりも(自分達の天下り先である)金融機関の経営重視姿勢からくる金融政策を改め、データに基づく金融政策に変えるべしというのが、著者の結論です。

 〈2〉つぎに、緊縮財政の問題点について触れてみましょう。

 著者は、過去30年の経済停滞要因を、デフレと、政府の過少投資としています。デフレの要因は金融政策ですが、過少投資の原因は、緊縮財政の結果としての、①不適切なPB(プライマリーバランス)と②過大な社会的割引率4%に問題があったとします。

 不適切なPBの背景は、財務省の大ウソである「日本の財政危機に基づく、緊縮財政です。

 著者は、日本の財政状況は、2018年から始まったIMFのPSBS(Public Sector Balance Sheet)による、統合政府のネット資産により、正しく判断できるとします。

 つまり、連結(中央政府+地方政府+政府関係機関+中央銀行)ベースのネット資産(グロス資産-グロス負債)で判断すべきなのです。PSBSのネット資産算出の注目点は次の二つです。中央銀行のバランスシートの負債のうち、銀行券と当座預金(マネタリーベース、日銀は2024年3月末682兆円)対応分は、経済的な意味での負債性はないので差引かれます。また、中央銀行が保有する中央政府が発行した国債残高(日銀は2024年3月末590兆円)は、連結で、相殺されます。この結果日本の統合政府のネット資産はほぼゼロになります。外国為替資金特別会計の含み益(45兆円)を勘案すればプラスです。ネット資産ゼロの日本は、G7における財政状態の健全さでは、カナダに次ぐ2番目です。

 従って、著者は、中央政府の財政収支のPBではなく、統合政府の連結ネット資産のPBが正しいとします。建設国債で公共投資(道路など)をする場合、統合政府PBを基準とすればネット資産ゼロですので実施OK、中央政府の財政収支のPB基準では実施NOとなります。

 次に過大な社会的割引率4%ですが、ゼロ金利時代に、割引率4%では、プロジェクトが成り立つわけがありません。著者は、適切な社会的割引率であったならば、G7各国と同レベルの成長を遂げたとの試算(JPタラレバ)をしています。「JPタラレバ」は(注1)の〔図1〕のP1の〈グラフ2〉をご覧ください。

 著者は、『失われた30年」から脱却し、力強い明日の日本を築くには、「中央政府の財政収支PB」及び「社会的割引率4%)」の政策を変えなるべし』と言います。

(注1)   過少投資の一例として「各国公的資本形成の推移」及び「過少投資の原因は過大な社会的割引率」について、下記URL〔図1〕を参照下さい。

 図1URL: http://glomaconj.com/joho/keiei/sakai20241224-1.pdf

 

(注2)   “大ウソの『日本の財政危機』を検証する”“統計的には、統合政府PB(ネット資産)が正しい”について、下記URLの〔図2〕を参照下さい。

 図2URL: http://glomaconj.com/joho/keiei/sakai20241224-2.pdf

【日経平均最高値更新はバブルか?】

 2024年2月22日、1989年の史上最高値を更新し、7月11日には4万2224円02銭をつけました。この高値はバブルでしょうか。著者は、理論株価(日経平均銘柄の経常収益)を大きく上回るのがバブルとします。バブル期の日経平均株価は、理論株価の2倍まで買われました。2010年前後の民主党政権時代には、過小評価のピークで、日経平均株価は理論株価の60%に止まりました。2012年、第二次安倍政権がスタートし、アベノミクス効果により過小評価が徐々に解消され、2020年には過小評価が解消されました。2024年7月11日の日経平均株価は理論株価と一致するレベルであり、バブルではないと、著者は言います。

(注3)「1960年~2022年の理論株価と日経平均株価の推移」は、下記URLの 〔図3〕を参照下さい。)

 図3URL: http://glomaconj.com/joho/keiei/sakai20241224-3.pdf

【その他の注目記事】

 字数の関係から注目記事のご紹介は以上としますが、『改めて言う、円安は日本経済に「悪影響」ではない』『日本は金融ハブの座を(香港から)奪う好機』などの記事も、新たなデータが加えられており、注目です。

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■ 力強い明日を目指す、財政・金融政策とはこれ!(むすび)

 上記で「失われた30年」の原因の一部を見て来ました「失われた30年」を脱却するのは簡単ではなさそうです。力強い明日の実現に向けて、政界、官僚、マスコミ等が、ファクトに基づく正しい認識をし、力強い明日に向けて尽力することを期待したいですね。

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【酒井 闊プロフィール】
 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。  企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。
【 注 】  著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。
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