【神を祭り、歌い踊った大和人のハレの世界】
奈良県立民俗博物館(大和郡山市)で企画展「大和の祭りと芸能」(11月11日まで)が始まった。展示しているのは「春日若宮おん祭り」の田楽や県内各地に伝わる太鼓踊り、お田植え神事のオンダ(御田)、奈良市・八柱神社の「題目立」、五條市・念仏寺の「陀々堂の鬼走り」など、古くから伝わる祭りで演じられる芸能の写真や〝小道具〟など。同館では祭りと芸能の関わりや意味を考えるきっかけになれば、としている。
ひときわ目を引いたのが「陀々堂の鬼走り」で鬼が被る「鬼面」(上の写真㊧)。父母子の3匹の鬼が大松明を抱えて走る勇壮な祭りだが、その鬼の面の大きいこと。父鬼は縦が約60cm、横幅は約40cmもある。太鼓踊りは吐山(はやま)、国栖(くず)、丹生、大柳生などが県内では有名だが、太鼓踊りでよく使われるのが先端を青や赤に染めた「シデ」(上の写真㊨、吐山の太鼓踊りのシデ)。太鼓の音は雷鳴を連想させることから雨乞いなどで太鼓踊りが行われてきたが、シデはその際、振って太鼓打ちを指揮するために使う。
「題目立」は毎秋、八柱神社で数え年17歳の若者が特有の抑揚で軍記物を語って奉納する。「語り物が舞台化した初期の姿」がそのまま残っているとして、2009年に世界無形遺産に登録された。演目の一つ「厳島」で若者が着る平清盛役用の素襖(すおう)や詞章本などが展示されている。「おん祭り」は保延2年(1136年)に始まったが、その影響を受け奈良県東北部などの秋祭りでは田楽や相撲、翁舞などが演じられることが多いという。「おん祭り」に関して展示されているのは春日大社蔵の田楽の衣装や太鼓、ササラなど(下の写真㊧)。
会場の一画に「大和の神饌・仏供」として写真30枚(野本暉房さん撮影、上の写真㊨)も展示されていた。餅や団子、造花のほか魚の頭、鉢巻飯、百味御食(ひゃくみおんじき)、紙人形の人身御供などユニークなものもあって、改めてお供え物の種類の多さを実感!