【「紅蜀葵」とも。フヨウ・ムクゲ・ケナフも同じ仲間】
アオイ科フヨウ属の宿根草。フロリダ、ジョージアなどの北米南東部原産で、日本には明治初期に観賞用として渡来した。暑さに強く強い日差しを好む。真夏に根元から3~4本の茎が立ち上がり、高さ1~2mにもなる。花は直径15~20cmの真っ赤な5弁花で、1枚1枚離れているのが特徴。葉がモミジに似ていることからこの名がついた。葉は落ちる前、モミジのように黄色く色づく。
朝咲いて夕方にしぼむ一日花だが、次々と長い間花をつける。夏期は8~9月。同じ仲間にフヨウやスイフヨウ、ブッソウゲ(ハイビスカス)、ムクゲ、ケナフ、オクラなどがある。アオイ科植物はオシベとメシベが合着し花の中央から突き出る特徴を持つが、モミジアオイはその蕊柱(ずいちゅう)と呼ばれる赤いシベがとりわけ長い。先端でメシベが5つに分かれ、その下に無数のオシベが群がる。
近縁種のアメリカフヨウとの交配種が次々に生まれており、花の色は赤のほか白や薄いピンク、濃いピンクなどもある。花びらの形も丸みを帯びて幅広いものや角ばったものなど様々。さらに白花で真ん中が赤く、ムクゲとほとんど見分けがつきにくいものまで出てきた。モミジアオイの葉は掌状で細長いが、交配によって葉の形も多彩になっている。
モミジアオイは別名「紅蜀葵(こうしょっき)」。名前がよく似て同じ頃に咲く花に「黄蜀葵(おうしょっき)」(上の写真)がある。これは同じアオイ科だが1年草で中国原産。薄い黄色の大きな花をやや下向きにつける。根に粘液を多く含むため別名「トロロアオイ」。その粘液は胃腸病などの薬用となり、和紙漉き用の糊としても使われてきた。ただ、この2種類の花、どう見ても名前ほどには似ていない。「紅蜀葵」はもちろん夏の季語。「汝が為に鋏むや庭の紅蜀葵」(高浜虚子)。虚子が孫を亡くしたことを悲しんで詠んだといわれる。