く~にゃん雑記帳

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<大阪島屋> 大阪出店115周年記念「暮らしと美術と島屋」展開幕

2013年09月19日 | 美術

【絵画・工芸・美術染織・歴史史料など約650点】

 大阪島屋で18日「暮らしと美術と島屋」展(30日まで)が開幕した。京都で呉服商として創業した島屋が大阪に進出したのは115年前の1898年(明治31年)。最初、心斎橋に出店し、その後、長堀、さらに現在の難波に移った。同展は4~6月に東京・世田谷美術館で「企業と文化」をテーマに開いたのに続くもので、美術作品や史料など約650点で創業以来の変遷をたどる。

   

 絵画の中で注目を集めそうなのが「世界三景 雪月花」と題したビロード友禅のための下絵三部作。山元春挙「ロッキーの雪」(写真㊧)、竹内栖鳳「ベニスの月」、都路華香「吉野の桜」の壮大な3点だ。1910年にロンドンで開かれた「日英博覧会」に島屋が出品し名誉大賞を受賞した。3点の友禅壁掛けのうち「ロッキーの雪」と「ベニスの月」は大英博物館に収蔵されている。

 竹内栖鳳と都路華香は菊池芳文、谷口香嶠とともに〝楳嶺門の四天王〟といわれた。彼らの師、幸野楳嶺の友禅下絵「紅葉渓図」も出品されている。真っ赤な紅葉の下で親子の鹿たちが群れ遊ぶ秋の静穏な光景を描いた。そのそばには谷口香嶠の友禅下絵「牡丹図」も並ぶ。

 浅井忠の「大原女」(上の写真㊨)も大胆な構図で目を引いた。手前左側に柴をどっさり背負った白馬、中央奥に2人の大原女を置いた画面構成。浅井は1906年に関西美術院を創設するなど後進の育成に努めた。門下に浅井曽太郎や梅原龍三郎らがいる。この2人は後に〝日本洋画壇の双璧〟と称された。その梅原龍三郎の油彩「桜島」も出品されている。錦江湾を挟んで手前に家並み、画面上半分に赤く染まる桜島を配置し、梅原らしい豪放なタッチで描かれている。

     

 竹内栖鳳は明治20年代前半、島屋の画工室(デザイン室)で美術染織品の下絵を描いていた。島屋が栖鳳の作品を多く所蔵しているのもそのためだろう。「ベニスの月」の下絵以外にも代表作の1つ「アレ夕立に」や「富士」「国瑞」も展示されている。「アレ夕立に」(上の写真㊧)は清元「山姥(やまんば)」に題材を取った京舞を踊る舞妓の一瞬の姿を切り取った作品。これも1910年の日英博覧会に出品された。顔を扇で隠すことによって、より艶っぽい作品になっている。

 北野恒富の「婦人図」(上の写真㊨)は1928年(昭和4年)に大阪長堀店で開かれた着物展のポスターの原画。北野は明治末期から大正にかけてデカダン的な美人画を描いた。ポスターには島屋の呉服催事「百選会」の顧問をしていた与謝野晶子の一文も添えられた。このポスターは大きな反響を呼んで、駅に掲示されるや、その多くがすぐに持ち去られたという。

 この他にも明治~昭和期の画壇を代表する画家の逸品がずらりと並ぶ。岡田三郎助「支那絹の前」、中川一政「福浦湾風景」、小出楢重「六月の郊外風景」、児島善三郎「薔薇」、東郷青児「裸婦」、島崎鶏二(藤村の次男)「竹林」、前田青邨「みやまの四季」、土田麦僊「鮎」、小野竹喬「秋」、池田遥邨「高雄錦秋」、奥田元宋「霧晴るる湖」、棟方志功「弘前参禅寺長勝寺山門」、岡本太郎「創生」……。さらに宮本憲吉、河井寛次郎、濱田庄司の焼き物も。島屋コレクションの豊富さと質の高さに改めて感心させられた。

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