【キキョウ科の多年草だが、花姿はキキョウとは全く別】
キキョウ科ミゾカクシ属(ロベリア属)の多年草。北海道から九州にかけて全国の日当たりのいい湿原や山間の湿った草原などに自生する。沢に生えるキキョウの仲間ということから「沢桔梗」の名が付いたが、キキョウ属の秋の七草キキョウとは花も葉の形も似ていない。
晩夏~初秋に花穂を0.5~1mほどに伸ばし、下から順番に花を咲かせる。花びらは深く切れ込んだ5弁花で、上の2つは細く左右に伸び、下は3つに裂ける。キキョウと同じく〝雄性先熟〟。自家受粉を裂けるため、まず雄しべが花粉を出し、それが終わった後に雌しべが発達する。
花色は青紫が一般的だが、長野県北部には花冠の内側だけが白い「トガクシ(戸隠)サワギキョウ」が分布する。海外産の洋種サワギキョウは赤や紫、白など多彩で、米国生まれの「ベニハナ(紅花)サワギキョウ」は鮮やかな深紅色で人気を集める。国内では八甲田山や尾瀬、入笠湿原(長野県富士見町)などの群生地が有名。ただ全国的には湿原の減少に伴って自生地も減っており、埼玉、石川、徳島など17都県で絶滅危惧種に指定されている。
茎は中空で、折ったり傷つけたりすると白い乳液を分泌する。ロベリンという有毒成分を含み、口にすると頭痛や嘔吐、下痢などの症状を引き起こすことも。一方でロベリンは喘息など呼吸困難時の回復薬や鎮痰、禁煙補助剤などとしても利用される。サワギキョウは有毒植物であるとともに薬用植物でもあるわけだ。「秋を呼ぶ風のひびきの沢桔梗」(小松崎爽青)。