【別名「帆掛草」、葉や茎には独特な臭気】
クマツヅラ科の多年草で、日本から朝鮮半島、中国にかけて分布する。花の形をカモの仲間の水鳥、雁(ガン)が飛ぶ姿に見立てて「雁金草」の名が付いた。家紋の「結び雁金紋」にちなんだともいわれる。雁金は雁の古名。雁の鳴き声「雁が音」が転じて雁そのものを指すようになった。
花期は8~10月頃で、草丈は0.6~1mほど。青紫色の清楚な5弁花だが、その花姿は実に個性的。5つに裂けた花びらのうち中央の下片は唇状で大きくて紋様が入る。上の方からは長いオシベ4本とメシベが弓なりに湾曲して、下片の花びらの前まで伸びる。ハチなどの虫が花に留まると、背中に花粉が付き、その花粉が雌しべの柱頭にも付いて受粉するという仕掛けだ。カリガネソウにはシベを小舟の帆に見立てた「ホカケソウ(帆掛草)」の別名もある。
カリガネソウのもう1つの特徴は独特な臭気。クマツヅラ科の植物には芳香、あるいは悪臭を放つものが多い。例えばクサギやランタナ、ムラサキシキブ、ハマゴウなど。カリガネソウはその楚々とした花姿には似つかわしくないような不快な臭いを発散する。だが、涼しげなかわいい花姿の人気は根強く、最近では葉の周りなどに白い模様が入った「斑入りカリガネソウ」も出回っている。
このカリガネソウも全国的には自生地は減少傾向。環境省のレッドデータブックには未掲載だが、都道府県段階では東京で既に絶滅したとみられ、秋田、埼玉、神奈川、石川、愛媛、福岡、熊本など12県で絶滅の危険性が極めて高い絶滅危惧Ⅰ類に分類されている。絶滅したと思われていた秋田県では2001年に秋田市内で50年ぶりに発見されたという。準絶滅危惧種になっている京都府では15年前、カリガネソウの保全を目的に「久保川と天王山の森を守る会」が結成され、環境保全活動に取り組んでいる。