【雌雄異株、フキの葉が伸びる前に明るい緑色の苞葉に包まれて】
フキは日本原産のキク科の多年草。うす緑色の苞葉に包まれたフキノトウがひょっこり顔を出すと、待ちかねた春ももうすぐそこ。そのほろ苦さと独特な香りから、古くから春を代表する山菜として天ぷらや汁の実、煮物、和え物などに広く使われてきた。栄養価も高く、北海道では冬眠から覚めた熊は真っ先にフキノトウを口にするという。
小花が密集した頭花がいくつも集まって球状の1つの花を構成する。雌雄異株で、雄株の花が少し黄色っぽいのに対し雌株の花は白い。花がたくさん詰まってふっくらした雄株のほうが美味といわれる。雌雄異株の野菜には他にホウレンソウやアスパラガスなど。アスパラバスも雄株のほうが太くておいしいそうだ。
山菜として味わうには花がまだ蕾のままで苞葉が開ききっていない状態のころに摘み取る。フキノトウの「トウ(薹)」は花をつける花茎のこと。アブラナなどの野菜の花茎が伸びると硬くなって食べごろを過ぎてしまう。この状態が「トウが立つ」。フキノトウもトウが立つ前に摘み取ることが大切。
フキの語源には諸説。古名の「布々岐(ふふき)」に由来する、いや、冬に黄色っぽい花を咲かせるところから「冬黄(ふゆき)」から来ている……。そんな中でおもしろいのが言語学者・金田一春彦氏の「拭き」説。この説は長崎・対馬での体験から生まれた。あるお屋敷の厠内に大きなフキの葉がトイレットペーパー代わりに重ねられ、下を覗くと使用済みの葉っぱが捨てられていた――。「みつけたる夕日の端の蕗の薹」(柴田白葉女)。