【地元出身の英雄、横綱琴櫻の銅像も】
「山口ちょうちんまつり」見物を機に、車で中国地方を5泊6日で1周した。京都で国道9号に入って鳥取、島根、山口を巡り、帰りは国道2号や188号、250号などを使って広島、岡山、神戸と時計回りに。初日は鳥取の浦富海岸や砂丘、伯耆(ほうき)一ノ宮倭文(しとり)神社などを回った後、倉吉市打吹(うつぶき)玉川地区の白壁土蔵群を訪ねた。
鳥取県のほぼ中央に位置する倉吉は打吹城の城下町で、江戸時代には商都としても栄えた。今も旧市街地の本町通りと玉川周辺には江戸末期から明治時代にかけて建てられた土蔵群が残る。一帯は国選定の伝統的建造物群保存地区。玉川には鯉が泳ぎ、いくつもの石橋が架かる。屋根は赤褐色の石州瓦。造り酒屋や醤油屋、町家などを改造した建物は「赤瓦○号館」と命名され、1号館から16号館まである。京風建築の6号館「桑田醤油醸造場」(明治9年創業)は県指定保護文化財。
倉吉市は「緑の彫刻プロムナード」と銘打って市民の散歩道に個性豊かな彫刻を配置している。伝建保存地区の一角にある「ひとまちひろば」にも犬の彫刻がベンチにねそべっていた。制作者は奈良県のマスコットキャラクター「せんとくん」の作者としても知られる籔内佐斗司氏。白壁土蔵群を南に下ると、倉吉市役所前の県道38号に出る。その交差点に「琴櫻顕彰碑」が立っていた。琴櫻(1940~2007)は地元出身の第53代横綱。押し相撲を得意として「猛牛」の異名を取り、現役引退後は佐渡ケ嶽親方として琴風や琴ノ若、琴欧洲ら多くの関取を育てた。幕内最高優勝5回。白壁土蔵群の一角には化粧回しや優勝額などゆかりの品々を展示した「琴櫻記念館」もある。
倉吉を訪ねる前に鳥取県で最初に向かったのは山陰海岸ジオパークの浦富海岸(岩美町)。海水浴場には「全国ベスト5認定 環境省・水質調査」という案内板が立っていた。鳥取砂丘ではラクダのライド体験に家族連れが列を作っていた。砂丘を出て西に行くと、神話「因幡の白うさぎ」で有名な白兎海岸。その近くに国指定天然記念物の「ハマナス自生南限地帯」があった。ハマナスは高さ1mほどのバラ科の落葉低木。花期は5~6月頃で、この時期には色鮮やかな橙色の果実をたくさん付けていた。
伯耆一ノ宮倭文(しとり)神社(湯梨浜町)は東郷湖に近く、御冠山の中腹に鎮座する。この地の主産業が日本古来の織物「倭文織(しずおり)」だったことから、倭文部(しとりべ)の祖神建葉槌命(たてはづちのみこと)を主神として祀る。平安後期に銅経筒や金銅観音菩薩立像(白鳳時代)などが埋納された経塚は国指定史跡。東郷湖は汽水湖で、湖畔には東郷温泉、はわい温泉がある。湖の中央付近の湖底からも温泉が湧いているそうだ。