【延岡市・内藤記念館所蔵の「天下一」の能面なども展示】
奈良県立万葉文化館(明日香村飛鳥)で特別展「日本文化の源流―いまに続く芸能」が開かれている(12月10日まで)。「大和芸能土壌―鬼から翁へ」「大和の村祭りと神事能」「『天下一』の世界」の三章構成で、宮崎県延岡市の内藤記念館の協力の下、古代の伎楽から舞楽、大和猿楽、能楽に至るまでの日本の伝統芸能の流れを様々な仮面や古文書、映像などで紹介している。
日本最古の外来演劇、伎楽は日本書紀によると、612年に百済から日本に帰化した味摩之(みまし)が伝えたといわれる。飛鳥時代から奈良時代にかけて流行し、東大寺の大仏開眼供養(752年)でも上演された。第1~第2章では万葉文化館所蔵の伎楽面や能面、舞楽面のほか、法隆寺の「鬼追い式」や長谷寺の「だだ押し」で使われる鬼面、談山神社に伝わる能面などが展示されている。参考資料として日本書紀、延喜式、続日本紀なども展示中。
内藤記念館は延岡藩の旧藩主、内藤家から寄贈された能狂言面や武具、書画などの文化財を所蔵する。能狂言面は全72点で、その中には豊臣秀吉が優れた能面師に与えた称号「天下一」の焼印が入った能面30点が含まれる。毎年秋には「天下一」の能面を着けて演じる「のべおか天下一薪能」がNPO法人のべおか天下一市民交流機構などの主催で開かれており、21回目の今年も10月7日に延岡城址二の丸広場で能「野守 白頭」などが上演され、観世流能楽師片山九郎右衛門がシテを勤めた。
今特別展では前後期合わせて「天下一」18点を含む38点の内藤記念館蔵の能面を展示。そのうち「天下一若狭守」銘が「雷」「不動」「痩男」「蛙」「霊女」「蛇」(チラシ写真の右下)など13点を占める。若狭守は一説に、秀吉が肥前名護屋に在陣中に召し出された京都・日野法界寺の僧で面打ち師の角坊(すみのぼう)といわれる。ほかに「天下一近江」の「猿飛出」、「天下一備後」の「若女」、「天下一大和」の「大癋見(おおべしみ)」(チラシ写真の左上)など。会場の一角では「のべおか天下一薪能」の模様も上映されている。