【長さ15~20cmの花序に淡黄緑色の蝶形花】
マメ科フジ属(またはナツフジ属)のつる性落葉低木。フジの仲間はほとんどが春に咲くが、このナツフジは真夏の土用の丑の日を中心に7~8月に開花する。このため「土用藤」と呼ばれることも。葉の脇から長さ15~20cmほどの総状花序を下垂、マメ科特有の蝶形の小花をたくさん付ける。花色はうすい黄緑色。秋に長さ10~15cmの豆果ができる。
日本固有種で、本州の関東以西、四国、九州の山林に自生する。花序や葉の形などは一見ノダフジやヤマフジに似るが、ナツフジは全体的に小ぶりで、盆栽用として栽培されることも多い。つるの巻き方はノダフジが右巻きなのに対し、ナツフジはヤマフジと同じ左巻き。変種に花色がうすいピンク色のものがあり、「アケボノナツフジ」と呼ばれているそうだ。
万葉集の大伴家持の歌に登場する「ときじき藤」をナツフジとする説がある。「わが屋前(やど)のときじき藤のめづらしく今も見てしか妹が笑まひを」(巻8-1627)。家持が妻になる坂上大嬢(おおいらつめ)に贈った歌で、「ときじき」は「時ならぬ」「時節外れの」を意味する。「夏藤の揺るる山門父の忌来る」(森あさえ)