【ここにもあった! 天守台の石垣に幸せのハート石】
岡山県の北部に位置する城下町津山。津山城は江戸時代の初期、美作津山藩の初代藩主森忠政(1570~1634、森蘭丸の弟)によって鶴山(つるやま)の古城跡に築かれた。築城に13年を要したという。しかし2半世紀後、廃城令で天守閣をはじめ全ての建物は取り壊される。残ったのは石垣だけだが、その高くて重厚な石垣が豪壮だった往時の城郭を偲ばせてくれた。
城跡は1963年に国の史跡に指定され、いま鶴山(かくざん)公園として市民憩いの場になっている。2005年には築城開始400年を記念して、本丸から南側に張り出した石垣上に備中櫓(びっちゅうやぐら)が復元・公開された。古い絵図によると、この櫓内には御座之間、御茶席、御上段などがあった。通常の櫓にはまれな全室畳敷き、天井張りという構造で、天守閣に次ぐシンボル的な建物だったとみられる。絵図に基づき御殿建築として復元された備中櫓は遠くからも眺めることができる市民自慢の新しいシンボルだ。
備中櫓の室内を見学させてもらった後、北側の天守台に向かった。天守は地下1階地上5階建てで、高さは約22mだったという。地下から地上に登る石段脇の石垣に大きなハート形の石があった。近くに「愛の奇石」と書かれた案内板。それによると「この奇石に触れたカップルは恋が成就すると密かな恋愛スポットになっています」。そういえば、9月に訪れた四国の丸亀城にも石垣の中に「幸運のハート石」があったなあ。
石段を登り、上から地下部分を見下ろす。そこには天守の柱を支えた四角形の平らな礎石が並んでいた。柱は約38cm角という巨大なものだったという。案内板にまだ天守が現存していた頃の白黒写真が焼き付けられていた。その勇壮なこと。スマートな〝層塔型〟と呼ばれる構造で、下層から上層にいくに従って建物の幅が小さくなっていく。城跡は県内有数の桜の名所。「さくら名所100選」にも選ばれている。観光用のチラシに必ず登場するのも満開の桜の背後にそびえる備中櫓の写真。次は「津山さくらまつり」の頃に再訪したいものだ。