【アオスジアゲハの食樹、樟脳の原料や船材にも】
クスノキ科の常緑高木。日本から中国南部、台湾にかけて自生し、国内では暖かい本州の関東以西と四国、九州に分布する。春芽吹く若葉は清々しく美しい。新葉の脇から円錐花序を出して白い小花を多数付け、秋に球形の果実が黒紫色に熟す。葉を揉むと芳香が漂うのも特徴。寿命は1500~2000年ともいわれ、長命なことから神社によく植えられご神木となっているものも多い。
学名は「Cinnamomum camphora(シンナモムム・カンフォラ)」。属名の語源はシナモン(肉桂)、種小名は「樟脳」を意味するアラビア語に由来する。和名の語源には「奇(くす)しい木」「薬の木」「臭(くす)し」など諸説。枝葉の精油成分の結晶は防虫剤や合成樹脂セルロイドなどの原料の樟脳となり、緻密で光沢のある材は建築材、船材、彫刻材などとして利用されてきた。広島・宮島の厳島神社は1100年代半ばに平清盛によって造営されたことで知られるが、脚が海中に沈む大鳥居は昔から耐水性に優れたクスノキが使われてきた(8代目の現鳥居は修理工事中)。クスノキはアゲハチョウの仲間アオスジアゲハの幼虫の食樹にもなっている。
クスノキには樹齢が推定数百年、中には1000年以上というものも現存し、千葉県以西には国の天然記念物に指定されているものも多い。その中で天然記念物の上に「特別」と付くものが3つある。徳島県東みよし町の「加茂の大クス」、福岡県新宮町・久山町の「立花山クスノキ原始林」、鹿児島県姶良市の「蒲生のクス」。このうち立花山の原始林には樹高が30m以上のクスノキだけでも約600本もあるという。蒲生のクスは100年ほど前の大正時代に作られた「大日本老樹番付」で東の横綱になっていたそうだ。クスノキは兵庫、熊本、佐賀、鹿児島の4県の「県の木」。シンボルの木に制定している市町村も多い。例えば大阪府。数えてみると43市町村のうち17市町村、実に4割がまちを代表する樹木としてクスノキを選んでいた。「樟若葉(くすわかば)見上げて神に近づけり」(神山白愁)