【光琳筆「扇面貼交手筥」など34点】
大和文華館(奈良市学園南)で「旅の美術」展が始まった。「物語の旅」「名所の絵画」「絵師と旅」の3章構成で、江戸時代を中心とする工芸品や名所図会、絵画、屏風など34点が展示されている。いずれも同館所蔵の作品で、重要文化財の尾形光琳(1658~1716)筆『扇面貼交手筥(はりまぜてばこ)』や弟尾形乾山(1663~1743)筆『武蔵野隅田川図乱箱』なども含まれる。会期は8月22日まで。
『扇面貼交手筥』は高さ18.8×27.3×38.2cm。金箔を押した箱の側面や蓋、中の懸子(かけご)などに「西行物語図」や「八橋図・雪枯芦図」「富嶽図」などが描かれている。『武蔵野隅田川図乱箱』は乾山の没年1743年の作で、箱裏には「華洛紫翠深省八十一歳画」という署名がある。没年の作品にはほかにも『定家詠十二ケ月花鳥図』などが残っており、乾山の創作意欲が最晩年まで衰えを知らなかったことを物語る。
『緑釉日本地図文角鉢』は日本地図を型押し全面に緑釉をかけて焼き上げたもの。この制作には様々な分野で多才ぶりを発揮した平賀源内(1728~80)が関わったとみられることから「源内焼」と呼ばれている。源内は出身地の讃岐国で職人を雇って地図など斬新な意匠の陶器を焼かせていたという。「伊勢物語」の東下りなどの場面が描かれた作品も多く並ぶ。江戸中期の作品『伊勢物語図屏風』(六曲一双)には主人公の男性が旅の途中でカキツバタの歌を詠んだ八橋と、布引の滝の見物に出かけた場面が描かれている。
『曽我物語図屏風』(六曲一隻)に描き込まれたのは源頼朝が富士野で催した「富士の巻狩」の場面。屏風絵ではほかに渡辺南岳(1767~1813)のカエルが武士に扮し列を成す参勤交代のような『殿様蛙行列図屏風』、与謝蕪村(1716~84)の『蘭石図屏風』(四曲一隻)など。江戸後期の狩野派を代表する狩野栄信(1775~1828)の『南都八景図帖』や小田野直武(1750~80)の『江の島図』(チラシの上部)、司馬江漢(1747~1818)の『七里ケ浜図』、富岡鉄斎(1837~1924)の『攀嶽全景図』なども展示されている。小田野直武は平賀源内から西洋画の遠近法などを学び、司馬江漢は源内を通じて知り合い師事した小田野から洋風画を学んだそうだ。