【七分咲き、3月12日まで】
春の訪れを一足早く告げる盆梅展が各地で開かれている。関西で最も有名なのが滋賀県長浜市の盆梅展。訪ねたのは随分前だが、今でも初めて盆梅を目にしたときの情景、見事な古木の枝ぶりが目に浮かぶ。奈良県大和郡山市の盆梅展は長浜が今年で72回目なのに対し、まだ20回目と歴史は浅い。だけど今ではすっかり大和路の春の風物詩として定着、連日多くの見物客でにぎわっている。
大和郡山盆梅展の会場は郡山城跡の追手門・追手向櫓・多聞櫓(写真)。郡山城跡は「続日本100名城」の一つで、昨年11月には国の史跡にも指定された。主催は大和郡山盆梅展実行委員会(速見俊雄会長)。会場には愛好者が丹精込めて育てた花梅約120鉢がずらりと並ぶ。靴を脱いで櫓の建物内に入ると、花の甘い香りがマスク越しでも分かるほど漂っていた。
この盆梅展を前回訪ねたのは2017年の第14回のとき。ということは6年ぶりになる。入場券の販売窓口には「七分咲き」と書いていた。だが、屋外に展示していた鉢植えはまだほとんどが蕾の状態。屋内では咲き始めのちらほらからほぼ満開のものまでばらつきがあった。咲き具合を関係者に問うと「例年よりやや遅め」とのこと。
奈良県では大和郡山のほかに菅原天満宮(奈良市菅原町)の盆梅展も有名。一昨年2021年2月その天満宮を訪ねたとき、梅には大きく野梅、豊後、紅梅の3つの系統があり、野梅系は早咲き、豊後系は遅咲きが多いと教わった。開花時期も品種や生育環境によって違うようだ。
展示中の盆梅は樹高が3m近いものから数十センチのものまで様々。花も一重に八重咲き、色も白、桃色、濃い紅色と多彩。樹齢が優に100年を超えるようなものもいくつもあった。小さい盆梅ほど咲き進んでいるものが多いように見受けられた。
盆梅には名札が付いたものも多い。「舞姫」「紅姫」「悠妃」「春の淡雪」など優美な名前のものや「信玄」「順慶」「秀長」など戦国武将に因むものも。6年前に見かけたものも多く、久しぶりに友と再会するような懐かしさもあった。
中には太い幹がほとんど空洞になったものも。それでも枝先などにぷっくりと膨らんだ蕾をいっぱい付けていた。老当益壮(ろうとうえきそう)。老いてますます盛んな盆梅の逞しい生命力に「まだまだこれから」と力をもらった1日だった。
会場そばの「郡山城址会館」の前には「清明梅」と名付けられた梅林がある。2014年の市制60周年の記念樹として植樹された。こちらの梅林は枝垂れ梅が二~三分咲きで、ほとんどはまだ咲き始め。見ごろはもう少し先になりそうだ。ちなみに、この城址会館は1908年に日露戦争の戦勝を記念して奈良公園内(現在の奈良県庁の南側)に建てられた旧奈良県立図書館の本館。1968年にこの郡山城跡の一角に移築された。